昨年12月22日(月)、CBRと開発の勉強会が開催されました。6月の第1回以来、4回目となる今回は、M・ピート著『CBR』の第10章「CBRにおける調査研究」を題材に筆者が話題提供を行ないました。当日は、前半に本章の内容を要約・解説し、後半はCBR研究の現状について簡単に調査した結果を報告しました。
原著の発表された1997年は、ご存知のとおり、いまだICIDH(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps:WHO国際障害分類)の時代です。このため、本書の背景に医学モデル的な障害観やCBR観があっても不思議ではありません。実際、本章でもところどころに障害当事者の参加に関する言及はあるものの、基本的にはCBRを医学分野におけるリハビリテーションの一手法と捉えていると見受けられました。例えば、本章はCBR研究の歴史や困難要因について述べていますが、これらはどれもリハビリテーション研究の歴史や困難要因を述べているに過ぎないと筆者には感じられました。
では、原著発表から遠く時代の下った現在、CBR研究の実情はどうでしょうか?Web上でアクセス可能ないくつかの文献データベースを使い、CBR研究の傾向を調べてみました。
まず、国内ではCBR研究の数の非常に少ないことが分かりました。科研費補助金や医学中央雑誌など4つのデータベースを合わせて、過去10年で年平均2つ未満程度の発表しかありません。一方、米国国立医学図書館のデータベースでは過去20年に70の文献がありました。ただ、これもそう大きな数とは言えませんが。
またその内容ですが、日本では概論的・概念的な文献か、逆に極めて具体的な活動報告が大半でした。しかし、世界的には概論的・概念的な発表や活動報告は近年減少しており、特に過去3,4年では、CBRの評価指標など具体的技法の開発へ向けた研究が多くなっていました。
今後は日本でもCBR研究が量的に増え、さらに具体的な技法開発へ向けた研究の推進が望まれます。