アジア保健研修所(AHI)
林かぐみ
2009年3月9日のセミナーのゲストであったマラトモ・スカルマンさんは、2001年のアジア保健研修所(AHI)国際研修の参加者。福島での研修の後、AHI(愛知県日進市)を再訪してもらい、3月12日〜13日次の2つの企画を実施しました。
1つめは、「災害と障害」をテーマにした(特活)レスキューストックヤード(RSY)との共催での講演会。RSYは、阪神淡路大震災をきっかけにできた団体で、「減災のまちづくり」を掲げて、地域づくりを通して防災を進めています。マラトモさんには04年スマトラ沖津波後の活動を紹介してもらいました。
以下は、終了後RSYの浦野愛さんのコメントです。「地元主体、ゆっくり丁寧に、被災者の一声ひとこえを大切にしていくという姿勢は、私たちと同じだなと思いました。日本での日常的な防災対策の取り組みは、海外でも生かせるのではないかと思いました。マラトモさんたちの活動は、もともとあった地域の問題を、災害をきっかけにしてあえて浮き彫りにすることで、制度化したり、その問題をサポートする環境を整えたり、応援団を増やしたりということを上手に進めていると感じました」
2つめは、日本福祉大学アジア福祉社会開発研究センターとの共催。マラトモさんと大澤諭樹彦さん(同大博士後期課程・秋田大学)の二人がスピーカー。マラトモさんによるCBR-DTCの活動を紹介後、「援助機関撤退後、活動が持続しないのは、支援が関係する個人へのインセンティブ付与にとどまっているためではないか」という問題意識を持って、CBR-DTC撤退後の地域を調査した大澤さんが研究成果を発表。支援団体は活動の成果(関係者にとっては活動に関わる「利益」)を上げることに注力するが、実際は関係者が集まるためには種々の「コスト」も生じる。しかし介入期間中は、コストは支援団体によって「肩代わり」されるため、見過ごされがちになる。そして支援終了後は利益よりもコストが上回ってしまう。これが持続しない要因である。コストを下げかつ活動成果を保つには、組織の連帯を高める活動を取り入れるとともに、資源動員につながる仕組みが地域社会において組み込まれる必要があると主張。
マラトモさんはすでにこの指摘を受けており、「既存の活動との統合、既存の資源の活用」の重視は、ひとつの対応であると述べました。
最後にもうひとつ。滞在中、障害者雇用に積極的に取り組んでいる豊田市の工場を訪問。その会社を定年退職した女性が自分のボランティア活動や障害者支援の経験を生かして、「罰金を払うくらいなら、自分が支援者としてつくので障害者雇用を推進しませんか」と会社に申し出たところから取り組みが強化されたとのこと。
市の支援員との連携、直接毎日接する職場の人たちの理解・協力を得ながら進めている状況を聞きました。マラトモさんは、私企業が取り組んでいること、障害を持つ人が他の人と一緒の職場で働いていることに大いに励まされたようでした。