社会福祉法人全国盲ろう者協会 評議員
門川紳一郎
社会福祉法人全国盲ろう者協会では国際協力推進事業を実施しています。これは、世界盲ろう者連盟が2001年に発足し、その役員の一つであるアジア地域代表に日本が就任したことがきっかけで始まった事業です。そして、2007年3月には韓国において「盲ろう者の自立&支援会」の結成に協力し、日韓での盲ろう者の交流を続けてきました。
この経験に続き、今度はネパールの盲ろう者支援に取り組むことになり、去る3月3日から約1週間の日程で、全国盲ろう者協会から盲ろう者2人を含む総勢11名をカトマンズに派遣することになりました。この派遣団の一員として、私も同行しましたので、ここでご報告したいと思います。
ネパールの盲ろう者福祉の掘り起こしに乗り出すことになったきっかけは、協会理事の福島氏がネパール人留学生カマル・ラミチャネ氏と出会ったことに始まります。
日本の盲ろう関係者がネパールを訪問するのは今回が初めてのことで、われわれとしては出発前から心配事でいっぱいでした。果たしてネパールで盲ろう者と出会えるのだろうか?盲ろう者について現地の人たちにはどこまで理解してもらえるのだろうか?なによりも、われわれの話をネパール語できちんと伝えることができるだろうか?等々、不安は尽きなかったと思います。
今回のメインは、3月5日と6日の2日間にわたる、「ネパール・日本盲ろう国際セミナー」の開催で、そのためにカマル氏はネパール、特にカトマンズの視覚障害者団体や聴覚障害者団体をはじめ、行政関係者、はては、首相や大統領にまでコンタクトをとり、当日の参加を呼びかけて下さいました。
さて、セミナーですが、参加者には、ネパール盲人福祉協会(NAWB)やろう学校関係者などをはじめ、約100名が集まり、盛大に行われました。来賓には、ネパール副大統領や在ネパール日本大使が出席され、祝辞を述べられました。福島氏の記念講演も行われ、その様子は国営テレビでも放映されたそうです。
セミナーでの日本からのプレゼンテーションは、初日に、国立特別支援教育研究所の中澤惠江氏から「日本における盲ろう児教育について」と私から「日本の盲ろう者の現状と日常生活について」をそれぞれ約1時間程度発表しました。また、2日目には福島氏が「盲ろう者のコミュニケーション」と題して、コミュニケーションが盲ろう者の生きる気持ちを引き出す上で大変重要な役割を担っていることを話され、盲ろう者への理解を呼びかけました。
このセミナーには、ろう学校内の「盲ろうユニット」で学ぶ盲ろうの児童が7人も参加していた他、盲人福祉協会の関係で、盲難聴の若い兄弟が参加していました。これは日本グループにとっても大変嬉しいことで、彼らと出会えただけでも、このセミナーを実施した成果は大変大きいと思います。
今後ネパールとの交流をさらに深めながら、ネパールの盲ろう者福祉の向上に少しでも役にたちたいと思っています。