日本点字図書館
田中徹二
11月15日から20日まで、世界盲人連合(WBU)アジア太平洋地域総会が、シンガポールのホテルで開催された。アメリカ、スペインや南アフリカを含め18か国から100人を超す視覚障害者と関係者が集まった。わが国からは笹川吉彦日本盲人会連合会長ほか、田代副会長、名取女性協議会長、竹下国際委員長、指田同委員会事務局長等が出席した。オブザーバー、付添やアジア大平洋障害開発センターの二宮さんらを加えると、30人近い日本人が出たことになる。この中には、助成団体の助成を得て5人の若者(いずれも全盲)がいた。
第1日目の15日は女性フォーラム。ここでは名取日盲連女性協議会長の発言を通訳した田端美智子さんが、日本から地域女性委員会委員に推挙された。
16日は青年フォーラム。5人の若者が短い時間ながら英語でそれぞれの意見を発表し、中根地域青年委員会委員や青松盲人国際協力会(本会会員、国際視覚障害者交流・協力ネットワーク:JIBEC)代表の発言と相まって、日本人若者の存在を大いにアピールした。
17日と18日は総会。開会式では、岩橋明子日本ライトハウス会長から岩橋武夫賞がカンボジア盲人協会のバウン・マオ会長に贈られたほか、ビジネスセッションでは、昨年大阪で開催されたアジア太平洋盲人サミットについて山口和彦WBU執行委員が報告した。
また、昨年度損保ジャパンからの助成を受けて調査されたアジア太平洋地域諸国の盲人事情について、地域事務局長のアイバン・ホ・タク・チョイ氏(マレーシア)が感謝を込めて報告した。
来年1月から沖縄JICAが始める盲人マッサージ研修事業について、「沖縄プロジェクトを支援する会」の笹田三郎さんが紹介したところ、大反響で質問が相次いだ。1月に開催される指導者研修は、1か月間で盲人のマッサージ訓練を職業訓練として位置付けていくためのものなので、政府関係者が応募の第1条件になっていた。政府の役人が申請してしまい、NGOの自分たちは応募できなかったという意見や、研修内容について疑問視する考えなどが示されたが、各国がJICAに対する期待の大きさを改めて実感した。それは、バンコクに来年建設されるアジア太平洋障害者開発センターに対しても同様で、二宮さんとサランパット所長の説明に対し質問と期待が寄せられた。
19日、20日はアクセスフォーラムで、ここでも日本人が大活躍した。高橋玲子さん(全盲)が、(財)共用品推進機構を代表してアクセシブルデザインについて報告。
日本のシャンプーボトルや各種カードの切り込みになれて説明し感心を集めた。また、国土交通省の視覚障害者用鉄道駅内誘導システムのガイドラインについて、青松さんが解説したが、二人とも流暢な英語が際立っていた。GPSによる盲人誘導装置や盲導犬についての発表があったセッションでは、山口さんが司会を務めた。
このように今回の地域総会では、日本人の活躍が目立ったが、WBUができる前の世界盲人福祉協議会の時代からご主人の英行氏と一緒に国際盲人会議に出席していた岩橋WBU名誉会員は、日本代表の参加態度が一変したことに強い感銘を受けたようだった。以前は国際会議に合わせて日盲連がツアーを組み、開会式や閉会式には全員が出るが、あとは観光に行ってしまい、公式ディナーにも顔を出さない。日本人用に用意されていた席がたくさん空席のままとなり、外国の出席者からは顰蹙をかい、主催者からは文句を言われるといった経験が何度もあったからだろう。日盲連が国際委員会を作り、そこから国際会議には出席者を派遣することを決めた功績は大きい。しかも若者を含めて、日盲連の幹部以外にも発言を認めたのも画期的なことで、今後の国際舞台での日本人の活躍が大いに期待できる。来年12月に南アフリカのケープタウンで開催される第6回WBU世界大会にも、今回のような体制が維持されることを望みたいものである。
2003年11月17日、18日 シンガポールにて。
我々この総会に参加したすべての視覚障害者団体の代表者、および関係者は、視覚障害者の人権に根ざした自己実現とアジア太平洋地域でのこの協議会の更なる発展を目標にこの決議を宣言する。
アジア太平洋地域での視覚障害者、および弱視者が政府機関、および視覚障害者関係のNGO組織などの多大の努力にも拘わらず、にまだに日常生活面で大きな不利益を被っており、かつまた視覚障害者の人権が侵害され、あるいは無視されていることを認識する。
具体的には、情報・コミュニケーションに関する知識や技能などを含め,教育、就労の面でさまざまな不利益を受けているし、単独歩行での安全確保はもとより、スポーツやレクリエーション活動の面でも「完全参加と平等」という観点から見ると問題が山積している。
視覚障害者関係団体の連携の下、視覚障害者の団結力と行動力は、世界盲人連合の掲げる 「視覚障害の意味するもの」というテーマに大きな影響を与えている。
(訳:山口和彦)