JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第247号 5月号 2024年5月31日発行 ―目 次―  トピックス 〜第21回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. インドネシアの障害者政策: 障害者カードとその実施 ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業 第22期生 マウディタ ゾブリタニア(インドネシア) インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 第22回「リハ協カフェ」  2024年7月5日(金) トピックス 〜第21回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. インドネシアの障害者政策: 障害者カードとその実施 ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業 第22期生 マウディタ ゾブリタニア(インドネシア)  ※去る2024年4月26日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第21回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。   障害者カードや障害者証明書の意義は、それが単に有効な身分証明書であるということにとどまらず、社会保障の一形態として機能していることです(Mont他、2019年)。障害者カード・証明書により、医療サービスから教育上の便宜・配慮に至るまで、障害者にとって必要不可欠なサービスの利用が可能になります。それは、障壁を取り除き、社会への平等な参加を促進する上で重要な役割を果たします。 インドネシアのような国々は、そのことを認識し、法的枠組みを確立し、障害者の権利を守るプログラムを実施するための措置を講じてきました。国連障害者権利条約を2011年に批准した後、インドネシアは障害者に関する法律2016年第8号を制定しました。第22条において、障害者カードを取得する権利を含む、障害者のデータ収集に関する権利について具体的に指摘しています。さらに第121条では、障害者カードについてさらに詳しく述べています。全国障害者データに登録されている障害者は障害者カードを取得する権利があると規定されています。さらに、障害者カードの発行は、ソーシャルセクターの行政事務を担当する省庁の権限下にあり、発行に関する詳細は省令により規定されています。 「ジャカルタ障害者カード」は、市内の障害者住民を支援する取り組みとして2019年に導入されました。このプログラムの設立は、ジャカルタ首都特別州政府に関する法律2007年第29号、社会福祉に関する法律2009年第11号、障害者に関する法律2016年第8号、障害者の権利の尊重・保護・履行の実施に焦点を当てた地方規則2022年第4号、社会保護の観点に立った社会的支援の提供に関する州条例2022年第44号など、いくつかの立法機関制定法に基づいています。 「ジャカルタ障害者カード」を所持している人には、公共交通機関の利用や主食購入に係る経済的負担を軽減するため、DKI銀行を通じて3ヶ月に1度引き出せる月額30万ルピア(約2,800円)の手当及び様々な割引が提供されます。このカード取得のための資格条件は、ジャカルタ市の住民であることを証明する有効な身分証明書を持つ低所得世帯の障害者で、指定されたウェブサイトおよび統合社会福祉データ(DTKS)システムを通じて障害者データ収集に参加した人であることです。 「ジャカルタ障害者カード」は、インドネシアの首都における障害者支援の大きな前進ではありますが、適用範囲が限られていることを認識することが重要です。このプログラムの恩恵は依然として都心部に限られており、国内のほとんどの障害者はまだその恩恵を受けていません。 他の地域では、障害を認定するための代替手段として、Surat Keterangan Disabilitas(スラット・カテランガン・ディサビリタス=障害者証明書)を使用しています。それは、基本的に病院またはインドネシア全土にある政府指定の地域保健所「Puskesmas(プスケスマス)」の医療専門家が発行する、個人情報、検査結果や障害を証明する内容が記載された手紙です。「ジャカルタ障害者カード」とは異なり、この書類は障害者であることを証明するものであり、これにより毎月の手当や必要なサービス料金の割引などの特典が与えられることはありません。この証明書は通常、政府系企業の求人に応募する際や、障害者を対象にしたプログラムに参加する際に使用されます。 しかし、その証明書を申請する過程で、多くの障害者が困難に遭っています。その主な原因は、制度に関する理解不足で、それによりさまざまな種類の障害を正確に評価・対処することができないという結果をもたらしています。 障害者カードや障害者認定制度の実施には、制度の利用可能性における地理的な格差や、医療、補助器具、交通機関など必要不可欠なサービスについての配慮が不十分であることなど、いまだにいくつかの課題があります。さらに、包括的な監視・評価システムがないことや、障害についての認識や理解不足も問題を複雑にしています。これらの課題に対処するには、総合的なアプローチが必要かもしれません。これには、アクセシビリティ(利用しやすさ)を向上させるインフラ整備への投資、プログラムの認知度を確保するための啓蒙活動や啓発キャンペーンの強化、障害者、医療提供者、支援団体を含む関係者間の協力などが含まれます。 インドネシアは今後、包括的なデータ収集、定期的な評価、そして全国的な障害者認定プログラムの包括性と有効性を高めるための協同努力を優先しなければなりません。定期的な評価とフィードバックの仕組みは、プログラムの有効性を評価し、障害者が十分な支援を受けられるようになるために重要です。障害者に力を与え、彼らの多様なニーズに対応する支援的環境を育んで行くことで、インドネシアは、一人ひとりが平等な参加の機会を持つ、よりインクルーシブ(包摂的)な社会を目指して前進して行くことができます。   参考文献: ・Dinas Sosial(2023年)。KPDJ(Kartu Penyandang Disabilitas Jakarta)。ポータルResmi Provinsi DKI Jakartaより検索。www.jakarta.go.id ・障害者に関する法律第8号(2016年)。 https://peraturan.bpk.go.id/Details/37251/uu-no-8-tahun-2016 ・Mont, D., Palmer, M., Mitra, S.他(2019)。障害者IDカード: 効果的デザインの問題。Development 第62巻、 96?102頁。https://doi.org/10.1057/s41301-019-00216-1   ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 191 (2024年5月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.第22回「リハ協カフェ」 2024年7月5日(金) 日本障害者リハビリテーション協会の国際委員会では、国際協力分野において障害分野の課題に取り組んでいくため、情報発信を継続し、関係者への情報提供を行うべく、2020年8月よりリモートによる報告会「リハ協カフェ」を隔月で開催してまいりました。今回は第22回目の開催です。 第22回は、1999年から日本障害者リハビリテーション協会が委託を受けて行っている「ダスキン・アジア太平洋 障害者リーダー育成事業」で、過去に日本で研修を行った研修生である、ルーさん(タイ)に、現在の自国の障害者施策やご自身の活動報告等をいただきます。また、「撫子寄合」のペギー・プロザーさん、佐藤啓子先生に、在日外国人ろう者の状況と日本語教室の取り組みをご報告いただきます。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。   ◆日時:2024年7月5日(金)13:30〜15:30 ◆会場:リモート開催(Zoom) ※要約筆記・手話通訳が入ります。 ◆主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ◆共催:障害分野NGO連絡会(JANNET) ◆参加費:無料 ◆定員:100名 プログラム(敬称略) 13:30-13:35 開会挨拶 水嶌 美幸氏(公益財団法人 ダスキン愛の輪基金 常務理事/事務局長)       13:35-13:55 報告1 "Disability Certificate in Thailand"「タイの障害者手帳について」 発表者:カォクン タンティピシックン氏 (タイ)(ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業 第19期生)                 13:55-14:05 質疑応答@                 14:05-14:35 報告2 "Bringing Together Deaf Foreigners current situation and issues in Tokyo"「外国人ろう者同士を繋ぐ東京の現状と課題」 発表者: ペギー プロザー氏 (一般社団法人撫子寄合 副代表) 14:35-15:05 報告3 「ろう者の特性を生かした日本語教育」〜外国人ろう者対象の日本語教室の実践を通して〜 発表者: 佐藤 啓子氏(亜細亜大学留学生別科非常勤講師/明晴学園(中学部日本語担当)非常勤講師)          15:05-15:25質疑応答A 15:25-15:30 閉会挨拶 廣瀬 芽里氏(一般社団法人撫子寄合 代表) 15:30    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【発表者プロフィール】 ・Kaewkul Tantipisitkul(カォクン・タンティピシックン) 氏(ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業第19期生:タイ) ニックネーム:ルーさん 障害:聴覚(難聴:右耳に補聴器装用) 《プロフィール紹介》 【学歴】 政治学 学士(チュラロンコン大学) 精神保健学 修士(チュラロンコン大学) 国際研究博士課程(早稲田大学) 【経歴】 1.聴覚及びコミュニケーション障害者エンパワーメント局 小委員会 2.タイろう者協会(NADT)副会長 3.タイろう者協会(NADT)手話・手話通訳 小委員会 4.タイ ろう者通訳クラブ(DIT)顧問 5.ダスキン・リーダーシップ・トレーニング・プログラム第19回卒業生 ・ Peggy Prosser (ペギー プロザー) 氏(一般社団法人撫子寄合 副代表) アメリカ生まれのろう者、日本在住31年。 一般社団法人撫子寄合副代表、特定非営利活動法人YES, DEAF CAN!の副代表。 ギャローデット大学で国際開発学を専攻、経営学の学士号を取得。 2013年に世界ろう連盟(WFD)の職員として、ニューヨークにある国際機関や組織の国連とのコミュニケーションを図っていた。 現在はフリーランスとして言語指導、手話通訳、観光及び国際開発コンサルティング関係の仕事に携わっている。毎年春から秋の間は世界各国から訪れる観光客を日本の様々な場所へ案内している。 また、日本に住む外国人ろう者について、講演活動もしている。 ・ 佐藤 啓子 (さとう けいこ) 氏(亜細亜大学留学生別科非常勤講師/明晴学園(中学部日本語担当)非常勤講師) 1980年より国内外(JICAボランティアでチュニジアに、国際交流基金専門家としてインドネシアに派遣、国際学友会等)において外国人に日本語を教える。 2001年よりダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業日本語研修クラスを担当する。 2009年より明晴学園(私立ろう学校)でろう者に特化した日本語教育に携わる。 2022年から在日外国人ろう者を対象とした日本語教室の指導者・講師を務め、「外国人ろう者に教えられる日本語教師」養成にも取り組んでいる。 【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://www.jsrpd.jp/cafe22/ 申込受付:2024年7月4日(木)15:00まで ※情報保障が必要な方は、6月27日(木)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、テキストデータなど必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。      【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒162-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601 FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 編集後記 2015年の夏だったと思いますが、マレーシアで開かれたWBUAP(世界盲人連合アジア太平洋協議会)のセミナーに参加しました。このセミナーには、アジア太平洋地域の各国から、比較的若手の視覚障害当事者が参加していました。 懇親会でインドネシアから来ていた青年と話をしました。日本から来たことを伝えると「心の友」という曲を知っているかと尋ねられました。 「申し訳ないが知らない」と伝えると、余興のために持参していたギターを手に、「心の友」を弾語りで歌ってくれました。 後日、「心の友」は五輪真弓さんの曲で、1980年代のインドネシアで大ヒットし、以来両国の交流イベントなどで歌い継がれてきたことを知りました。これは、自分がものを知らないことを痛感した経験でもあり、人の心を繋ぐ音楽の存在を感じることができた思い出でもあります。 今号で、マウディタ ゾブリタニアさんにインドネシアの障害者政策についてご紹介いただきましたこと、心より感謝申し上げます。 (伊藤 丈人/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 新URL: https://jannet-hp.normanet.ne.jp/ ↑ホームページのアドレスが変わりました!ご注意ください。 以上