JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第249号 7月号 2024年7月31日発行 ―目 次―  トピックス 〜第22回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. タイにおける障害者証明書の背景 ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業 第19期生/早稲田大学大学院博士課程 カォクン タンティピシックン(タイ) 2. 野毛坂グローカルのタイスタディツアーに参加しての気づき 早稲田大学法学部 3年(休学中) 藤原 梨乃 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1.Earlink第1回対面イベント 2024年8月18日(日) 2.みんなのSDGs・SDGs市民社会ネットワーク共催セミナー 2024年8月19日(月) 3. グローバルフェスタJAPAN2024 2024年9月28日(土)・29日(日) トピックス 〜第22回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. タイにおける障害者証明書の背景 ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業 第19期生/早稲田大学大学院博士課程 カォクン タンティピシックン(タイ)   ※去る2024年7月5日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第22回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。   障害者証明を取得することで、多くの障害者が福祉サービスを受けられるようになりました。その一方で、障害者証明は必要ないと考える人もいます。生活保護を受ける必要がない、自立できるなど理由はさまざまです。さらに、障害のある子どもを持つ親の中には、障害者証明の申請に消極的な人もいます。それは「偏見を持たれ、いじめられるのではないか」という不安があるからです。あるいは、障害者証明書等の恩恵がほとんどないと見なされていることも理由の一つです。そのような人たちはこの制度に登録しないため、障害者の数に入っていません。 しかし、障害者証明を取得することで、政府がデータや統計を把握し、時代によって変化する障害者への支援やエンパワメントについて、さまざまな角度から知ることができることは否定できません。タイは、障害福祉サービスを受けるために登録した人に障害者証明を交付している国の一つです。つまり、障害者証明は政府からの支援を受けるための入り口となるのです。 障害者証明書の歴史を振り返ってみますと、その背景には、まず政府が障害者施策に取り組み、その後、障害者のために政府と民間の障害者団体の協力により出来た法律が関係していることがわかりました。まず、タイでは1940年、ホームレスの福祉を担当する部署に作業グループレベルで障害者のケアを担当する部署が設置され、障害者施策が開始されました。1950年には、作業グループレベルの部署が障害者支援局になりました。1981年、公共福祉局と民間障害者団体は、障害者の生活の質を向上させる権利と機会の重要性を認識し、障害者に関する法律の制定を推進するために協力しました。 10年後の1991年、「障害者リハビリテーション法B.E.2534(1991年)」と呼ばれる、障害者だけに焦点を当てた法律ができました。この法律は多大な影響をもたらしました。例えば、障害者に特化した本部の設置、障害者の管理・援助・救済に関連する経費を支援するための基金の設立、リハビリテーション・サービスを提供する機関の支援、障害者、医療、教育、社会、職業訓練、教育技術、障害者関連団体の支援、「障害者を適切な割合で雇用していない事業所の雇用者または所有者は、基金に課徴金を支払わなければならない」という条項に見られる雇用支援などです。 1991年に制定された「障害者リハビリテーション法B.E.2534(1991年)」の第14節には「権利を行使したい障害者は、登録しなければならない」という障害者証明に関連する記述があります。本節は障害者証明書等の保持のために重要だと思います。障害者証明書も障害者手帳から障害者カードへと様々なスタイルに変わってきました。  現在、タイでは障害者証明のためのデジタル方式のアプリケーションがあります。アプリケーション名は「TH Sarabun PSKまたはAngsana New」です。英語では「障害者カード」と呼ばれることもあります。アプリケーションのデジタル障害者証明の画像は、実際のカードとまったく同じようです。障害者が実物の証明書等を忘れたり紛失したりしたときに、デジタル障害者証明を見せたり、使ったりすることができるので、非常に便利です。時代に合わせて開発されてきたものです。     2. 野毛坂グローカルのタイスタディツアーに参加しての気づき 早稲田大学法学部 3年(休学中)  藤原 梨乃 私は2024年4月に実施されたタイへのスタディツアーに参加しました。このツアーでは、様々な分野の有識者のお話をうかがう機会がありました。特に心に残ったのは、急速に発展している東南アジア諸国と日本の間で新しい「助け合い方」を自分たちが創る必要性を強く感じたことです。そして、私たち20代がその主体であるという自覚が必要だと思いました。 訪問したのは、国連(UNDP、ILO)、タイ社会開発人間安全保障省障害局、アジア太平洋障害者センター(APCD)、国際協力機構(JICA)など政策に関わる機関、NHKアジア総局、民間企業など民間セクター、そして後半には、NGO、タイの自治体など現場への訪問を行いました。 私は法学部で学んでいるため、途上国への法整備支援に関心がありました。UNDPの佐藤弁護士のお話が特に印象的でした。「法整備が進んでいる、遅れているという考え方はなじまない。日本が進んでいるわけではない」と述べ、多くの国で法整備が進んでいる現状と、新しい法整備支援のあり方を考える必要性を強調されました。  また、NHKや民間企業では、私たちが今まで理解していた東南アジアのイメージが実態と大きく異なることを実感しました。例えば、タイでは少子高齢化が進んでおり、日本と共に学びながら行っている取り組みの紹介をいただきました。また、タイの企業が国際化して、日本人がタイ企業で働く事例もあり、進んだ先進国と遅れた途上国といった従来の関係ではなくなってきていることを知りました。 アジア太平洋障害者センターでは、障害とは、障害者を取り巻く社会環境によって生じることを学びました。例えば、車椅子の人が階段を登れないのは、その人の足が悪いからではなく、エレベーターがないという環境が問題であるという考え方です。 カオプラガム市の訪問では、認知症の人を地域の住民で見守っている事例、洪水の危険がある地域に住む高齢女性を施設に避難させるのではなく自宅に住みながら地域で見守る選択をする事例など、一人ひとりに必要な支援を本人やコミュニティと相談しながら行っていることがよくわかりました。日本では安全のためにコミュニティと本人を引き剥がしたり、基準に従って一律の対応をすることが多いと思います、このような個別対応の重要性を感じました。 このように様々な学びの機会があったスタディツアーですが、それを通じて得たことは、「自分たちが」変革の主体となる意識の重要性です。NGOの人、地域の住民など様々な人が、「社会を良くするために」活動している様子を見て、私たち一人ひとりが世界やコミュニティを変える主体であることを再認識しました。 今回、スタディツアーを通じて得た気づきをもとに、私は新しい助け合い方を創るために積極的に行動し、未来の社会に少しでも貢献したいと強く思っています。   ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 191 (2024年7月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.Earlink第1回対面イベント 2024年8月18日(日) Earlink代表、早稲田大学3年の神谷綾音と申します。 私は生まれつき感音性難聴という障害があります。小学校から大学までずっと聴者の学校に通ってきました。 同じように聴覚障害のある学生6名とともにEarlinkを設立しました。少しでも聴覚障害のある学生たちがより良い学校生活を送れるように支援したいと思っています。 今回、8月18日にはじめての対面イベントを開催します。 様々なバックグラウンドを持った当事者学生の話を一気に聞けるチャンスです。障害のある人、ない人どなたでも参加できます!皆様のご参加をお待ちしております!   ※神谷さんは、2024年4月よりJANNET学生会員として入会されています。   ◆日時:2024年8月18日(日)14:30〜18:00(受付14:15〜) ◆会場:JICA地球ひろば市ヶ谷 6階 セミナールーム600 (東京都新宿区市谷本村町10?5 JICA 市ヶ谷ビル) ※手話通訳が入ります。 ◆後援:(公財)日本障害者リハビリテーション協会 障害分野NGO連絡会(JANNET) ◆協力:野毛坂グローカル ◆参加費:無料 ◆定員:80名(申込フォーム先着順 ※定員になり次第締め切り) 《プログラム》 14:30-14:40 あいさつ・説明 14:40-15:25 講演(3人) 15:25-15:40 休憩 15:40-16:25 講演(3人) 16:40-17:40 質疑応答・交流タイム 17:40-17:50 あいさつ・解散 ◆申し込み:下記URLまたはQRコードから https://x.gd/iHcHK ◆お問い合わせ:Earlink代表  神谷 綾音(かべや あやね) E-mail:kabemoco0509@outlook.jp   2.みんなのSDGs・SDGs市民社会ネットワーク共催セミナー 「複合的危機に直面する世界とSDGs:2030年までの折り返し地点における各種報告書をもとに  今後の方策を考える」 2024年8月19日(月) 「みんなのSDGs」は、SDGsに関連する社会・経済・環境をめぐる様々な課題や、日本政府の「SDGs実施指針」、「SDGsアクションプラン」などに関わる話題を取り上げてセミナー・シンポジウムを開催してきました。2016年に始まったSDGs達成への道のりは折り返し地点を通過し、後半戦に入っています。SDGsの達成が危ぶまれている一方、SDGsへの分野・セクター横断的な包括的取り組みを活かし発展させることが、複合的な危機に対処するための重要なアプローチと言えるかもしれません。 今回のセミナーでは、ここ1年ほどの間に刊行された国内外の報告書をもとに、様々な視点から現状を確認し、2030年に向かって取り組むべき課題と推進すべき方策について議論します。 ◆日時:2024年8月19日(月)18:30〜20:30 ◆開催形式:オンライン開催(Microsoft Teams)※字幕、手話通訳を調整中。 ◆参加費:無料 ※参加ご登録いただいた方に限り、ご希望される方に動画の事後配信(1か月程度)を予定しております。 《プログラム》 企画の趣旨(国際的な報告書の概要を含めて):藤田雅美氏(みんなのSDGs事務局長) 第一部: SDGsの現状と目標達成に向けた課題 1) 地方自治体: 「地方自治体SDGs達成度評価2023」から 丸山宗祐氏 (国連地域開発センター UNCRD) 2) ビジネス: 「SDGs進捗レポート 2023」から 氏家啓一氏 (グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ) 3) 市民社会:「SDGs取組に関するNPO・市民活動団体の全国調査 報告書」から 新田英理子氏 (SDGs市民社会ネットワーク) 第二部: 2030年に向けて推進すべき方策 モデレーター: 村上 仁氏(国立国際医療研究センター)、新田英理子氏(SDGs市民社会ネットワーク) ◆申し込み:下記URLよりお申し込みください。 https://forms.office.com/r/teaNAEji9h ◆お問い合わせ: みんなのSDGs/国立国際医療研究センター国際医療協力局  藤田 雅美 E-mail:mfujita@it.ncgm.go.jp 3.グローバルフェスタJAPAN2024 2024年9月28日(土)・29日(日) 「グローバルフェスタJAPAN」は、国際協力活動、社会貢献活動、SDGsなどに取り組む官民様々な団体が一堂に会する国内最大級の国際協力イベントです。 今年のテーマは、“国際協力70年、ともに未来へ” 2024年は、1954年に日本がODAを開始してから70年の節目の年。 国際協力70周年を迎える本年、第33回目になる「グローバルフェスタJAPAN2024」は、 昨年に引き続き、リアル(対面形式)とオンライン(配信形式)を両立したハイブリッド形式により開催します。 また、今年は、屋内のほかに屋外にも会場を準備しています。 出展団体によるブースを始め、多彩なゲストが出演するステージや体験イベント、様々な国の食事が楽しめる飲食・物販ブースなど盛りだくさん! 本フェスタを通じて、諸外国への理解が深まるとともに、より良い世界をつくるため、ともに未来へ向けて国際協力に参加する仲間が増えていくことを期待いたします。 <開催概要> 日時:2024年9月28日(土)・29日(日)10:00-17:00 開催テーマ:「国際協力70年、ともに未来へ 」 実施形態:リアル(対面形式)とオンライン配信形式(特設サイト)を両立したハイブリッド形式 場所:リアル会場: 【屋内】新宿住友ビル 三角広場(〒163-0290 東京都新宿区西新宿2丁目6?1) 【屋外】新宿中央公園 ファンモアタイムひろば(水の広場)(〒160-0023 東京都新宿区西新宿2丁目11) オンライン:下記特設サイトに当日オンライン会場を設置します。「オンライン会場はこちら」ボタンよりご参加ください。 入場料:無料 主催:グローバルフェスタJAPAN2024実行委員会 URL: https://gfjapan2024.jp/ 事務局:グローバルフェスタJAPAN2024実行委員会運営事務局 株式会社ライノ ・コネクト 担当:齋木、小松 Mail:globalfesta_exhibit@plan-sms.co.jp        編集後記 今号では、タイに関する話題を中心に、若手の執筆者による記事をお届けしました。 各国の経済的な発展、人口構成、ライフスタイルの変化などにより、国と国との関りや協力のあり方も、変わっていくのだろうと改めて感じました。 一方で、長い間かけて整備されてきた制度や、組織のあり方、活動のスタイルなどは、にわかには変えづらい部分もあり、現状と合っているか検証も必要です。ですが目先の変化に惑わされることなく、守り続けなければならない価値もあると思います。 そんなことを感じさせられました。  さて今年のグローバルフェスタは9月下旬に開かれます。JANNETでも出展申し込みを行いますが、その結果は、来月号にはお伝えできる予定です。どんな出展となるでしょうか、ご期待ください! (原田 潔/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: https://jannet-hp.normanet.ne.jp/ 以上