JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第254号 12月号 2024年12月27日発行 ―目 次―  トピックス 1. 「World Congress on Rehabilitation 2024」に参加して 特定非営利活動法人 支援技術開発機構 研究顧問/長野保健医療大学 特任教授 北村 弥生 2. 「JDF全国フォーラム」参加報告 特定非営利活動法人難民を助ける会 プログラムコーディネーター 田丸 敬一朗 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 第24回「リハ協カフェ」〜公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 設立60周年記念〜 2025年1月31日(金) トピックス 1. 「World Congress on Rehabilitation 2024」に参加して 特定非営利活動法人 支援技術開発機構 研究顧問/長野保健医療大学 特任教授 北村 弥生   ※去る2024年11月22日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第23回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。   「リハビリテーション世界会議2024(World Congress on Rehabilitation 2024)」の本会議5「災害リスク軽減と武力紛争における障害者インクルージョン:障害者インクルージョンのニーズとグッドプラクティスの特定」での発表を紹介します。 この本会議は、河村宏氏(RI/ICTA(技術とアクセシビリティに関する国際委員会)グローバル委員長)により構成されました。国連障害者権利条約第11条「危険な公共及び人道上の緊急事態」は、「危険な状況」を「武力紛争、人道上の緊急事態及び自然災害の発生を含む」と定義しています。そこで、この会議は、ガザ、ウクライナからの武力紛争、トルコ、アラブ首長国連邦、日本の自然災害の発表を計画しました。残念ながら、武力紛争地からの派遣は叶いませんでしたが、紛争地に縁のある聴講者からの知見が紹介され、「正式な情報を得にくい課題であるが留意を続けることの必要性」が共有されました。「アラブ首長国連邦には大きな自然災害はない」ということで、アブダビ民間防衛局公共安全管理部長からは火事での障害者対策も十分でないことが紹介されました。 筆者の発表では、2015年第三回世界防災会議に多くの障害者が参加し、採択文書「仙台枠組」に障害者への配慮の必要が反映されたこと、同会議の本会議「障害と防災」で発表された日本の実践が継続した成果から構成されました(河村, 2022)。実践については、新ノーマライゼーション誌(2024.3)にも詳しく掲載しましたが、次に概要を紹介します。 浦河町は北海道の南端にあり、地震の多発地帯で、津波の危険が高いので、4分で12mを昇ることが避難の目標です。自主避難訓練では、最初に、避難経路と避難方法を利用者自身が朗読して作ったDAISY版マニュアルを用いて全員で確認します。訓練では、全員が役割を持ちます。特殊な役割として「(不安のために)逃げ遅れる人」と声掛けや手繋ぎで「助ける人」がいます。利用者は精神障害の診断を得ている人ですが、中には、高齢化で足腰が弱くなっている人もいるので、車椅子に「JINRIKI(じんりき、けん引用車いす補助装置)」をつけて坂道を上る練習もします。近隣のホテル・銀行にも訓練参加を呼び掛けたり、マスコミに取材してもらうことで、坂道にあるマンホールのデコボコを町が舗装してくれるという成果も達成して、他の居住者の避難にも貢献する存在となりました。このように、障害者が「助けられる存在」でなく、地域に貢献する「防災資源」として、率先して災害準備に取り組むことを位置付けていることを紹介しました。   河村 宏. 仙台防災枠組み〜進化と将来の展望〜. 第15回障害者権利条約締約国会議(COSP15)サイドイベント. 2022年6月. https://www.atdo.jp/1430       2. 「JDF全国フォーラム」参加報告 特定非営利活動法人難民を助ける会 プログラムコーディネーター 田丸 敬一朗   去る12月9日、「JDF 20年の歩みと未来への展望 - 障害者権利条約の目指す社会の実現に向けて」と題して、JDF全国フォーラムが、戸山サンライズにおいて、会場とオンラインのハイブリット形式で開催されました。 前半は、以下の4つのテーマで、JDFの20年の活動を振り返りました。 @障害者権利条約の制定に向けて 国連特別委員会への参加(2002〜2006年) A障害者制度改革 権利条約の批准に向けて(2009〜2014年)  B権利条約の審査と総括所見に向けて パラレルレポートの作成(2017〜2022年)  C災害総合支援本部 大規模災害で被災した障害者の支援(2011〜2024年)  特に、国の障害者権利条約批准の動きに待ったをかけ、制度改革推進本部の下、障害者の法制度を策定していった推進会議の取り組みは、世界的に見ても十分に称賛されるべき活動であると感じました。また、JDFが条約の制定過程から積極的にかかわってきたことが、全国の障害者の声を反映したパラレルレポートの作成においても生かされ、障害者団体の意見を多く含んだ総括所見を引き出すことにもつながっているということも理解できました。 東日本大震災を機に発足した総合支援本部の取り組みも、近年増えてきている自然災害に対応し、熊本、能登でも活動が続いています。 後半は、現在の課題や未来をテーマに、プログラムが組まれていました。 来年から、国連障害者権利委員会の委員に就任される田門浩氏と藤井克徳 JDF副代表との対談では、権利委員会であっても情報保障や多様な障害者の参加について、課題が残されていることが話題に挙がりました。 さらに、JDFの今後の取り組みとして、障害者基本法改正に向けた意見のとりまとめに関する報告が行われました。続いて、「総括所見の実施に向けて−JDFの役割」と題してパネルディスカッションが行われ、藤原久美子 DPI女性障害者ネットワーク代表、桐原尚之 全国「精神病」者集団運営委員、佐々木桃子 全国手をつなぐ育成会連合会会長、中西久美子 全日本ろうあ連盟副理事長が、総括所見を受けてどのような取り組みが必要と考えているのか、それぞれの立場からご説明いただきました。 総括所見が出されて早2年になりますが、まだまだ目に見える形での影響は感じられないかもしれません。ですが、JDFを含む障害者団体が継続的に活動していくことにより、優生保護法裁判の勝利をはじめとして、権利条約の実施に向けて動いているように感じました。 今回のフォーラムを通して、JDFという障害種別を超えた団体のつながりが、日本の障害者政策に果たしてきた役割、影響力の大きさを強く感じることができました。今後、総括所見を踏まえて、日本の障害者制度をより良いものとしていくためにも、JDFを中心とした障害者団体の活動をさらに活発にしていかなければならないと再認識する機会となりました。   ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 191 (2024年12月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.第24回「リハ協カフェ」〜公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 設立60周年記念〜 2025年1月31日(金) 日本障害者リハビリテーション協会の国際委員会では、国際協力分野において障害分野の課題に取り組んでいくため、情報発信を継続し、関係者への情報提供を行うべく、2020年8月よりリモートによる報告会「リハ協カフェ」を隔月で開催してまいりました。今回は第24回目の開催です。 第24回は、令和6年に設立60周年を迎えた日本障害者リハビリテーション協会の主な事業を紹介いたします。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。 ◆日時:2025年1月31日(金)13:30〜15:15 ◆会場:リモート開催(Zoom) ※要約筆記がはいります。 ◆主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ◆共催:障害分野NGO連絡会(JANNET) ◆参加費:無料 ◆定員:100名 プログラム(敬称略) 13:30-13:35 開会挨拶 寺島 彰(日本障害者リハビリテーション協会 副会長) 13:35-13:55 報告1 「ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の紹介」 発表者:那須 里美(日本障害者リハビリテーション協会 人材開発課 課長) 13:55-14:05 質疑応答 14:05-14:25 報告2 「デジタル図書(マルチメディアデイジー):デモ・教科書製作の紹介」 発表者:吉広 賢史(日本障害者リハビリテーション協会 情報センター 副センター長) 14:25-14:35 報告3 「デジタル図書(マルチメディアデイジー):重度障害者の製作への参加」 発表者:西澤 達夫(日本障害者リハビリテーション協会 参与) 14:35-14:45 質疑応答 14:45-15:00 報告4 「障害分野NGO連絡会(JANNET)の紹介」 発表者:村上 博行(日本障害者リハビリテーション協会 情報センター長・JANNET事務局長) 15:00-15:10 質疑応答 15:10-15:15 閉会挨拶 清水 直治氏(障害分野NGO連絡会(JANNET) 会長) 15:15    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【申込方法】  以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。  https://www.jsrpd.jp/cafe24/  申込受付:2025年1月30日(木)15:00まで ※情報保障が必要な方は、1月23日(木)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、テキストデータなど必要があれば 申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。  【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒162-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号    TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp   編集後記 去る、12月9日障害者週間の最終日にJDF全国フォーラムが開催されました。2023年6月の障害者権利委員選挙にトップで当選しました、田門浩氏が登壇されました。日本から2人目となり、また、きこえない仲間として大変喜ばしく思います。しかし、大きな懸念があります。今、国際連合の財政が思わしくないことから、手話言語通訳の保障が充分に用意できないかも知れないと言うのです。障害者権利条約を制定、発動したのにこれでは本末転倒です。これでは、田門浩氏が権利委員として活躍できなくなるだけではなく、次期のきこえない・きこえにくい人が委員になる時やその他、盲ろう者等が委員に選ばれた時に大きな障壁になってしまいます。このような前例を作らぬよう、国際連合に責任を果たして頂きたいと願っています。 (嶋本 恭規/JANNET広報・啓発委員長) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: https://jannet-hp.normanet.ne.jp/ 以上