JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第255号 1月号 2025年1月31日発行 ―目 次―  トピックス 1. 「World Congress on Rehabilitation: WCR2024」に参加して 目白大学大学院リハビリテーション学研究科長/目白大学保健医療学部作業療法学科 教授 會田 玉美 2. 「第46回総合リハビリテーション研究大会」20年以上ぶりに大阪で開催 (一財)フィールド・サポートem(えん). 代表理事/日本福祉大学 実務家教員/第46回総合リハビリテーション研究大会 実行委員長 栗原 久 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 2. 新刊ブックレットのご紹介: 「福祉的就労」をめぐる国内外の動向 ―「社会支援雇用」実現をめざして― イベント情報 1. 令和6年度 音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研究事業「デイジー教科書事例報告会」 2025年2月23日(日) トピックス 1. 「World Congress on Rehabilitation: WCR2024」に参加して 目白大学大学院リハビリテーション学研究科長/目白大学保健医療学部作業療法学科 教授 會田 玉美   ※去る2024年11月22日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第23回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。   RI(Rehabilitation International )は、1922年に設立されたリハビリテーションおよび障害者の権利と生活の質の向上を推進することを目的とした100か国以上が加盟している国際団体です。4年に一度、各国のリハビリテーション協会の国際委員会開催とともに、学術集会が開かれます。WCR2024は、RIと国際社会保障協会(ISSA)そしてザイード高等機構(Zayed Higher Organization for People of Determination:ZHO)の主催により、中東地域で開催された初のRIカンファレンスであり、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで行われました。筆者は2024年9月23日〜25日に開催された本カンファレンスに発表者として参加しました。 筆者は「地域リハビリテーションアップデート」というセッションで発表しました。タイトルは「高次脳機能障がい者のためのコミュニティメンバーによるオンライン多職種コンサルテーション」でした。高次脳機能障がいとは後天性の脳損傷による言語・思考・記憶・行為・学習・注意などの高次の認知機能の障害を指します。 わが国では2013年より,精神障害者保健福祉手帳の対象として認められています。高次脳機能障がいは複数の障害が合併していることが多いですが、見た目ではわかりづらく、自覚が持ちにくいこと、日常生活動作よりも社会参加において障害がみられることが多いという特徴があります。したがって、病院を退院してから困りごとがみられるようになり、医療、障害福祉、介護保険などの複数の社会福祉制度の連携が必要とされます。高次脳機能障がい者の地域リハビリテーションと社会参加を促進するために、筆者が参画する板橋区地域自立支援協議会高次脳機能障害部会メンバーによる多職種が同時にオンラインで相談を受ける試みを紹介しました。 本カンファレンスは世界中から障がい当事者、研究者、臨床のリハビリテーション支援者が集まっており、セッションでのディスカッションや、昼食やコーヒーブレイクを通じて、各国のリハビリテーションに関する情報交換をしました。日本ではあまり知ることのなかったUAEの人口構成や社会経済、宗教、文化に根差した障がい者の福祉、医療やリハビリテーションを知る機会になりました。     2. 「第46回総合リハビリテーション研究大会」 20年以上ぶりに大阪で開催 (一財)フィールド・サポートem(えん). 代表理事/日本福祉大学 実務家教員/第46回総合リハビリテーション研究大会 実行委員長 栗原 久 「障害者就労の現状と課題〜近未来のために」をテーマに、2024年12月20日(金)21日(土)と、千里ライフサイエンスセンター(大阪府豊中市)を会場に標記の大会が開催され、予定を上回る260人の参加者がありました。開催に当たっては、主催者である(公財)日本障害者リハビリテーション協会、同常任委員会のもと、地元実行委員会(当事者、医療、教育、就労・福祉関係等23名の実行委員により構成)が準備を担ってきました。 1日目の午前は、主催者挨拶、地元歓迎挨拶に続き、実行委員長である筆者の基調講演「障害者の就労を巡って、今何が問われているのか」の後、鼎談「権利条約、就業支援ネットワークの視点から、大会テーマを深める」を、尾上浩二さん(DPI日本会議副議長)、酒井京子さん(全国就業支援ネットワーク部会長)と共に行いました。午後からは、シンポジウム1「リハビリテーション医療と就労支援機関の役割と連携〜高次脳機能障害を中心に」が、高岡徹さん(横浜市総合リハビリテーションセンター長)、長倉寿子さん(兵庫県立リハビリテーション中央病院部長)を座長に行われ、最後に次回大会の案内がされました。 2日目の午前は、セミナー1「福祉的就労の課題と展望〜その役割と意義について」と、セミナー2「精神障害者の就労支援の現状と課題〜当事者と支援者の視点から」が、それぞれ知的障害、精神障害当事者の話を交え、進められました。午後からは、シンポジウム2「教育から就労へ〜障害種別を超えて問われること」を、星明聡志さん((福)北摂杉の子会 ジョブジョイントおおさか所長)と筆者が座長になり話し合い、閉会挨拶へと続きました。 2日間を通して、全ての企画で当事者の登壇等が実現し、また多様な専門職(医師、作業療法士、教育やバリアフリーの研究者、就労・福祉関係の支援者、企業関係者)と共に、障害者就労の近未来をディスカッションできたことは、今大会の最大の成果と言って良いと思います。 時はまさに、障害者雇用の質、支援の質が問われる時代です。国連・障害者権利委員会は、日本への総括所見において福祉的就労から一般就労への促進を強く促し、また国内審議会等では、雇用率達成という数の面ばかりに目が行き、質が疎かになりかねない現状が憂慮されています。そして支援者の質の向上についても、喫緊の課題として強調されています。 筆者は基調講演で、総合リハビリテーションの視点での地道な取り組みは、量的問題に集約される雇用率云々というレベルを凌駕し、「雇用の質」「支援の質」を獲得し得るヒントになり得る旨、問題提起しました。各企画の中身はまさに、このことを具体化していく一歩となったのではないかと考えます。障害のある人が生きがいをもって、かつ尊厳が尊重される働き方を実現していくために、これからも多職種が同時期に、また長期的なスパンで連携していく、総合リハビリテーションの重要性が増していくことを確信した大会でした。       ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報    (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html)    署名国・地域数164/ 締約国・地域数 192 (2025年1月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en 2.新刊ブックレットのご紹介: 「福祉的就労」をめぐる国内外の動向 ―「社会支援雇用」実現をめざして― このたび、日本障害者リハビリテーション協会より、前JANNET会長である松井亮輔先生の著書が発刊されました。よろしければぜひお手に取ってご覧ください。   「福祉的就労」をめぐる国内外の動向 ―「社会支援雇用」実現をめざして― (A5判47ページ) 著者 法政大学名誉教授 松井亮輔 価格:500円(送料無料) 《目次》 はじめに 1.障害者雇用・就労にかかる国連および国際機関の主な条約・勧告等 2.日本における「保護雇用」および「福祉的就労」関連の動向 2.1 関連施策等の推移(1970年代?2020年代) 2.2 就労継続支援A及びB型の事業所数と利用者数及び月額平均賃金(工賃)の推移 3.欧州諸国における「保護雇用」の動向 3.1 エリック・サモイ/リナ・ワタプライス「欧州共同体(EC)における保護雇用」、欧州評議会、1992年 3.2 ローラン・ヴィジェ「障害者の保護雇用」、ILO国際労働レビュー第137巻第3号、1998年 3.3 欧州議会「合理的配慮と障害者のためのシェルタード・ワークショップ―投資の費用と利益」研究、2014年 3.4 アーサー・オレイリー「ディーセント・ワークへの障害者の権利」第3版、ILO技能・就業能力開発局、2015年 3.5 マロ・ミゲル A./ヴェネサ・ロドニゲス「障害者のための保護雇用―スペインを事例とした国際評価研究」、サマランカ大学、2022年 4.まとめ 4.1 一般雇用の質・量上の課題 4.2 シェルタード・ワークショップ等保護雇用の廃止に伴うネガティブなインパクト 5.提案:就労継続支援A・B型事業等の「社会支援雇用」制度への再編成 5.1 今後の「社会支援雇用」等、障害者雇用・就労支援制度の概念図案 5.2 「社会支援雇用」試案 おわりに <参考1>ドイツ連邦政府「障害者の参加に関する調査最終報告」、2022年 <参考2>ドイツ連邦政府「第3回参加報告」(2021年)第5章雇用と物質的な生活状況 申込URL https://store.shopping.yahoo.co.jp/jsrpd/book02.html イベント情報 1.令和6年度 音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研究事業「デイジー教科書事例報告会」 2025年2月23日(日) 日本障害者リハビリテーション協会は、平成20年度からボランティア団体等と協力して小中学校の発達障害など読みの困難がある児童生徒にデイジー教科書を製作・提供を行っています。当初80名だった利用者は、令和5年度に約2万5千人となり、前年度比で約5千名増と急速に増えています。 この急増を後押ししているのが、全利用者向けにサービスを開始した端末のブラウザーだけでデイジー教科書が再生できる配信システムです。GIGAスクール構想で配備が進んだ一人一台の学習者用端末での利用に最適化してあります。本報告会ではオフラインで利用できるブラウザー再生システムのご紹介と教育現場におけるデイジー教科書の活用事例、実体験、導入後の課題等について報告いたします。また、先生方がPDF等からデイジー版のテスト等の製作できるソフトウェアについてもご紹介いたします。ご参加をお待ち申し上げております。   ◆日時:2025年1月31日(金)13:30〜15:15 ◆会場:対面(新宿区戸山 戸山サンライズ)・オンライン(Zoomウェビナー) ◆主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ◆参加費:無料 ◆情報保障:ご希望に応じて要約筆記・手話通訳をご用意します。 ◆定員:対面 50名、オンライン 300名 プログラム(敬称略) 13:30-13:35 開会挨拶 君島 淳二(日本障害者リハビリテーション協会 常務理事)       13:35-13:45 日本障害者リハビリテーション協会のデイジーに対する取組とデイジー教科書の利用申請状況報告 村上 博行(本協会 情報センター長)       13:45-14:00 オフラインで利用できるブラウザー再生システムの紹介 西澤 達夫(本協会 参与) 14:00-14:20 デイジー教科書からアクセスリーディングへ移行した実体験について 高校2年生 14:20-14:40 デイジー教科書の導入後の課題について〜中学校の事例から〜 池田 明朗 氏(長野県上田市立丸子中学校 LD等通級指導教室 教諭) 14:40-15:10 デイジー教科書導入促進のための工夫と導入後の展望について(仮) 細川 淳嗣 氏(県立広島大学 保健福祉学部 コミュニケーション障害学コース 講師)       15:10-15:30 Chatty Library(チャティ・ライブラリ)について 鈴木 昌和 氏(NPO法人サイエンス・アクセシビリティ・ネット 代表)       15:30-15:40 質疑応答       15:40    閉会 司会:仁尾 志保(日本障害者リハビリテーション協会) *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【申込方法】 以下のサイトよりお申し込みください。 https://forms.gle/1beBHyxGHK66aYWcA 申込締切:2025年2月20日(木)   【お問い合わせ】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 情報センター》 〒162-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0796   FAX: 03-5273-0615    Eメール:daisy_c@dinf.ne.jp 編集後記 皆様、本年もどうぞよろしくお願いいたします。 今年2025年は、フランスの視覚障害者ルイ・ブライユが点字を考案してからちょうど200年に当たります。 ルイ・ブライユは5歳のころに失明し、10歳でパリの王立盲学校に入学します。そこでフランス軍において夜間の伝達用に作られた12点による暗号文字に出会います。 彼はこれを改良して、6点でアルファベットを表現する、点字を生み出しました。英語で点字を「Braille」とするのは彼の名に由来します。このときブライユは、弱冠16歳の少年でした。 点字登場以前にも、文字を紐やこより(紙縒り)で表す、先のとがったもので紙に刻みを入れるなどの工夫はされていましたが、いずれも実用に耐えるものではありませんでした。 彼の発明は、視覚障害者の歴史を転換させる偉大なものだったのです。 今、点字を使って勉強し、働く視覚障害者が世界中にいます。今年は国内外において、彼の発明に思いをはせ、この貴重な文字を守るための知恵を出し合う、そんな機会が多くなりそうです。 (伊藤 丈人/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: https://jannet-hp.normanet.ne.jp/ 以上