JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第256号 2月号 2025年2月28日発行 ―目 次―  トピックス 〜第24回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の意義 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 事業振興部 人材開発課 課長 那須 里美 2. みんなのSDGsセミナー 「SDGs後半戦とポストSDGsに向かって、私たちはどんなグッド・プラクティスを目指し、拡げていきたいのか:障がいの視点から考える」参加報告 JANNET企画委員長/アジア保健研修所(AHI) 事務局長・ラーニング事業部門長 清水 香子 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. Earlinkオンラインイベント 2025年3月15日(土) トピックス 〜第24回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の意義 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 事業振興部 人材開発課 課長 那須 里美   ※去る2025年1月31日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第24回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。     1.はじめに ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業(以下、ダスキン研修)は、公益財団法人ダスキン愛の輪基金から委託を受けて、当協会が実施しています。 ダスキン研修は、アジア太平洋地域の障害のある若者を日本に招聘し、障害者福祉の向上に寄与する人材育成を行っています。研修事業の詳細や卒業生の活躍は、ウェブサイトやSNSでご確認いただくこととして、本稿ではダスキン研修の意義をお伝えできればと思います。   2.ダスキン研修の成果 1999年に開始されたダスキン研修ですが、これまで29の国と地域から146名の卒業生を輩出しています。卒業生の中には、障害者団体の代表、国連機関の職員、行政機関のアドバイザー、国会議員になった人もいます。このように、卒業生は障害分野で重要な役割を担っていますが、今回は、1つの事例をご紹介します。 サンカさん(スリランカ出身、弱視)は、日本でタンデム自転車(前後にそれぞれサドルとペダルがあり、同時にペダルをこいで走行する二人乗りの自転車)を体験しました。晴眼者が前に乗ることで、後ろにいる視覚障害者もサイクリングを楽しむことができます。サンカさんは、このインクルーシブな乗り物に大変感動しました。その感動が忘れられなかったサンカさんは、帰国後、自転車会社に交渉し、スリランカにタンデム自転車を導入することに成功しました。サンカさんは仲間たちとタンデム自転車のイベントを企画し、その様子はメディアにも取り上げられ、反響を生みました。 視覚障害のある人の存在を社会に知らしめると共に、障害のある人がスポーツに挑戦する機会を創出した事例です。 3.ダスキン研修の意義 1)人生を変える出会い 卒業生は、「研修に参加したことで人生が変わった」と話してくれます。その一人であるクリシュナさん(ネパール出身、第6期生)との出会いが、「人生の転換点」となった女性が、現在、第24期生として来日しています。それはラクシミさんです。 ラクシミさんは、18歳の時に木から落ちて、脊椎損傷となりました。人生を悲観した彼女は、病院のベッドで毎日泣いていました。見かねた看護師がクリシュナさんに相談し、彼が設立した自立生活センター(以下、CIL)にラクシミさんは繋がりました。CILの職員は、彼女に車いすの操作や日常生活の方法を教えたり、学業が続けられるように奨学金探しに奔走してくれたりしました。そのおかげで、ラクシミさんは大学を卒業でき、水泳競技のパラリンピアンとしても活躍しました。今では障害のある女性のロールモデルとなり、CILで働いています。「クリシュナさんに出会わなければ、寝たきりの生活になっていました。大学にも行かせてもらえませんでした。今、色々な経験ができてとても幸せです」と彼女は話してくれました。 次はきっと、ラクシミさんが誰かの人生を変える活躍をしてくれることでしょう。このような「恩送り」を目の当たりにできるのは、長きにわたり、研修を継続しているからこそです。   2)日本に寄せる卒業生の思い 私が今でも忘れられないのは、3.11の時のことです。震災当時、第12期生の個別研修が実施されていました。被災した研修生はいませんでしたが、全ての研修生が地震への不安や恐怖を抱えていました。研修を続行するか途中帰国するかは、研修生の意思に委ねることにしました。研修生は悩んだ末、全員が日本に留まることを決めました。それからの研修生は本当に逞しかったです。自分たちに何ができるかを考え、研修先の方と一緒に街頭に立って募金活動をする研修生もいました。 彼らは日本人ではありませんが、私たちと同じ思いで日々を過ごしていました。 私たちスタッフも不安でいっぱいでした。そんな私たちを励ましてくれたのは卒業生です。震災後、多くの卒業生からメールや電話をもらいました。震災による犠牲者を悼む式典を自国で行った卒業生もいました。日々の生活は決して楽ではないのに、仲間と共に被災した方々への募金活動を行った卒業生もいました。遠く離れた地に住む卒業生にとっても、3月11日は忘れられない日となっていたのです。 このように、帰国後の卒業生は、草の根レベルの「親善大使」となっています。国際協力の目的の一つに、「日本を知っている人(知日)」「日本に親しみを持ってくれている人(親日)」を増やすことが挙げられるのならば、研修生に関わることは「国際協力」と言えます。これまで、研修生に関わってくださった皆さんが蒔いた「国際協力の種」は、アジア太平洋地域で花開き、確実に実を結んでいます。   さいごに 本稿を通じて、ダスキン研修に興味・関心を持ってくださる方が一人でも増えれば幸甚です。現役生の様子や卒業生の活動を、SNSで発信しています。ぜひご覧ください!   ウェブサイト:https://duskin-hp.normanet.ne.jp/ Instagram:https://www.instagram.com/duskin_leadership_training/                   Facebook:https://www.facebook.com/duskin.training/?pnref=lhc.recent   2. みんなのSDGsセミナー 「SDGs後半戦とポストSDGsに向かって、私たちはどんなグッド・プラクティスを目指し、拡げていきたいのか:障がいの視点から考える」参加報告 JANNET企画委員長/アジア保健研修所(AHI) 事務局長・ラーニング事業部門長 清水 香子   「みんなのSDGs」は、市民のSDGsへの関心を高めるため、NGOや市民団体が立ち上げたネットワークです。SDGsに関連する課題や、日本・世界の動向をとりあげ、セミナーを開催しています。   JANNETも構成団体の一員です。監事の原田潔さんと伊藤智典さんが運営に関わり、SDGs推進に欠かせない障害の視点を提起する役目を担ってくださっています。このお二人が中心となり、2025年1月31日、当セミナーが企画・開催されました。障害分野で活動する方々から多くの申し込みがあり、参加者は50名近くとなりました。 SDGs最終年の2030年まで、あと5年。複合的な危機が深刻化する中、ゴール達成には、課題をまたぎ分野を超えた取り組みが不可欠です。ですが、その動きが広がっているとはいえません。会の冒頭で、原田さんより、障害分野においてSDGsが意識されることは少なくその逆も然りであること、そして当セミナーでは、障害の課題に関わる地域の取り組みから、今必要な連携を考えたいという主旨が説明されました。さらに、障害者主体の考え方を表す言葉「私たち抜きに私たちのことを決めないで」が紹介され、SDGsの「誰一人取り残さない」取り組みにおいても、障害者が参加し一緒にすすめる重要性が、述べられました。   第1部では4人の方々から、SDGsと障害が交わる課題の取り組みが紹介されました。自立生活センターSTEPえどがわの今村登さんは、地域の様々なセクターを巻き込みすすめる地域づくりについてお話くださいました。インクルーシブという言葉が実質を伴うためには、当事者の参画と、協働や対話を通した対等な関係づくりが基盤であることが示されました。 学生が起業したCSK株式会社代表の伊澤陽希さんからは、地域の住民や異なるセクターをつなぐバリアフリー推進事業が紹介されました。ソーシャルビジネスを通じ、学生が社会課題に関心を持ち、さらに次の世代の育成へと活動を展開していることに、刺激と希望をいただきました。 企業の障害者雇用については、氏家啓一さん(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン)から企業にとっての多様性を持つ意味が話され、和田正裕さん(大阪大学社会ソリューションイニシアチブSSI)からは現場での課題事例と提起がされました。改めて人と人とが理解し合うプロセスが大切であることが示されました。 第2部では、田丸敬一朗さん(AAR Japan/JANNET企画委員会専門委員)が加わり、新田英理子さん(SDGs Japan)のコーディネートのもと、SDGs後半およびその後に向かい、どんな実践をつくっていくかについて、ディスカッションが行われました。障害の課題解決が誰にとっても暮らしやすい社会につながること、そして、障害を主流化し日常的に感覚で理解しあえる文化をつくる取り組みの必要性を、確認する時間となりました。     ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 192 (2025年2月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.Earlinkオンラインイベント 2025年3月15日(土) 「Earlink」は、JANNET学生会員の方が代表を務める、聴覚障がいのある学生が中心となって設立した団体です。Earlinkの詳細については公式Instagramに掲載されております。 Instagram:https://www.instagram.com/earlink._.2024?igsh=bTc5YXNwODRxaGU2&utm_source=qr 今回のオンラインイベントは、運営メンバー(聴覚障がい当事者)4人(大学生3人と社会人1人)によるトークセッションが中心になります。 トークセッションでは、メンバーや保護者が経験した過去の学校生活についてや、情報保障、過去と現在の自分の違いや、今の社会に対して思うことなど、様々なトピックについて語ります。また、合間に質疑応答の時間も設けます。 ご興味のある方は、ぜひお申し込みください。拡散も大歓迎です。 皆様のご参加をお待ち申し上げております。   ◆日時:2025年3月15日(土)14:00〜16:00 ◆会場:オンライン(Zoom) ◆主催:Earlink ◆参加費:無料 ◆情報保障:字幕をつけます。また、運営メンバーは音声+手話で話します。 ◆対象:聴覚障害のある学生や、その保護者  聴覚障害に関心のある方、どなたでも! プログラム 14:00-14:50 トークセッション(聴覚障がい当事者であるメンバーによるトークセッションです。)       14:50-15:00 休憩       15:00-15:15 質疑応答       15:15-15:45 トークセッションA       15:45-15:50 休憩 15:50-16:00 質疑応答&まとめ    16:00 閉会    【申込方法】 以下のサイトよりお申し込みください。後日、お申し込み時にご登録いただいたメールアドレスにZoomのリンクをお送りします。 申し込みURL:https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd7iSA4iulTvtrd5XrDhmPim_aljTmrqQ7OMHzu-qsqnwFIqQ/viewform    【お問い合わせ】 以下「Earlink」の公式Instagramより、DMにご連絡ください。 https://www.instagram.com/earlink._.2024?igsh=bTc5YXNwODRxaGU2&utm_source=qr 編集後記 今月号ではダスキンの太平洋障害者リーダー育成事業について紹介がありました。当協会もかつて、この育成事業で招聘された方とお会いし、日本の盲ろう者福祉の取り組みをお話する機会に恵まれました。その後、この方が帰国された後も交流が続き、2018年に日本で行ったアジア盲ろう者会議で再びお会いすることができました。 実は、このメルマガの発行翌日から3日間、ネパール・ポカラにて、盲ろう者世界会議(DBI)のアジア地域版が初めて開催されます。日本からも盲ろう当事者を派遣し、現地ネパールの盲ろう者支援団体をはじめ、関係者と交流を深めてまいります。 こうした交流を通じて知り合った方と、ダスキンさんの育成事業が繋がるかもしれません。色々な繋がりやきっかけを、今後も大切にしていきたいものです。 (小林 真悟/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: https://jannet-hp.normanet.ne.jp/ 以上