JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第258号 4月号 2025年4月28日発行 ―目 次―  トピックス 〜第25回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. リハ協カフェ:途上国における障害平等研修の展開 特定非営利活動法人 障害平等研修フォーラム 代表理事 久野 研二 2. リハビリテーションと社会リハビリテーションの国際的発展の経過 日本リハビリテーション連携科学学会・社会リハビリテーション研究会 顧問 奥野 英子 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 2. ESCAP「アジア太平洋障害者の十年」ワーキンググループ 第1回会合が開催されます。 イベント情報 1. 第26回「リハ協カフェ」 2025年5月23日(金) トピックス 〜第25回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. リハ協カフェ:途上国における障害平等研修の展開 特定非営利活動法人 障害平等研修フォーラム 代表理事 久野 研二 ※去る2025年3月11日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第25回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。 2025年3月11日に開催されたリハ協カフェで「途上国における障害平等研修の展開」をテーマに報告をさせていただきました。 ■障害平等研修(Disability Equality Training、DET)とは:DETは多様性を前提にした共生社会(インクルーシブな社会)の実現にむけた障害教育・人権教育です。Tokyo2020 オリンピック・パラリンピックのフィールドキャストの集合研修としても実施され8万人が受講しました。DETは、単に障害についての知識を得ることが目的ではなく、参加者自身が自分たちの地域社会や組織をインクルーシブなものへと変えていく行動の主体となるための行動志向型の研修です。 ■3つの特徴:DETは次の3つの特徴があります。(1)障害の社会モデルを障害理解の基礎とすること、(2)発見型・対話型の学習方法を取ること、(3)障害者自身が対話の進行役であるファシリテーターとなること、です。 ■DETの構成と実施:前後半の二部構成で、前半では差別や排除としての障害を見抜く分析の視点としての障害の社会モデルの視点の獲得を行います。後半では、多様性を前提にした共生社会を組織または個人として作り出す具体的な解決行動を考えます。通常は20−30名前後の参加者と2−3時間の対面型のワークショップ形式で行います。グループに分かれ、ファシリテーターと一緒にイラストやビデオなどの分析と議論を通し障害とその解決の行動についての対話を進めていきます。オンラインやオンデマンド型でも実施しています。 ■DETが導くもの:加害当事者性と変革当事者性:私が変「わ」る、私が変「え」る:DETでは参加者自身が差別や排除としての障害をめぐる課題に対する自分自身の加害当事者性(配慮されている側にいる事、特権側にいる事[“健常者特権”])の発見を出発点にします(私が変わる)。そのうえで社会を変えていく行動の主体となることを目指します(私が変える)。 ■途上国での展開:障害平等研修フォーラムでは、国際協力機構(JICA)や国連機関のユネスコやアジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)、タイにあるアジア・太平洋障害者センター(APCD)などと協力して、現在まで世界42か国に550名を超えるDETファシリテーターを育成し、各国での取り組みをすすめています。ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業でもファシリテーター養成講座が実施されています。民間ではアシックスと協力して国連6言語版の研修教材を作成し全世界のアシックスの社員研修としての実施なども進めてきました。第4次アジア太平洋障害者の十年のジャカルタ宣言実施指針においても「障害の社会モデル」の推進の取り組みとして推奨されています。 ■参考資料等 久野研二編(2018)社会の障害を見つけよう、現代書館 障害平等研修フォーラム:日本語版:www.detforum.org (日英のパンフレット有り) 英語版(国際版):www.detforum.com (DETの6冊のマニュアル・本がダウンロードできます)       2. リハビリテーションと社会リハビリテーションの国際的発展の経過【日本リハビリテーション連携科学学会・社会リハビリテーション研究会・勉強会報告】 日本リハビリテーション連携科学学会・社会リハビリテーション研究会 顧問 奥野 英子 日本リハビリテーション連携科学学会は1999年に、リハビリテーションの分野間、専門職集団間、専門職と障害当事者・家族との連携等を促進するために、設立されました。 日本リハビリテーション連携科学学会の自主研究会として1999年に発足した「社会リハビリテーション研究会」はこれまで25年間活動し、この間、公開研修会を開催し、5冊のプログラム・マニュアル本やDVDの発行などを行ってきました。 2024年度の第4回勉強会(2025年2月15日開催)において、「リハビリテーションと社会リハビリテーションの国際的発展の経過」について発表しましたので、その一部をご紹介します。 ■国際障害者リハビリテーション協会の発足 全米イースターシール肢体不自由児協会が母体となり、1922年に「国際肢体不自由児協会」が ニューヨークで設立され、1939年には「国際肢体不自由者福祉協会」となりました。さらに1960年には「国際障害者リハビリテーション協会(International Society for Rehabilitation of the Disabled:略称ISRD)」に改称され、更に1972年には「Rehabilitation International:略称RI」が正式名称となりました。 1960年代にはISRDの常置委員会として、医学委員会、職業委員会、教育委員会、社会委員会、心理委員会がありましたが、心理リハビリテーションはリハビリテーションのあらゆる分野において不可欠な専門領域であるとして独自の委員会はなくなり、リハビリテーション4分野の常置委員会となりました。 RIにおける現在の常置・専門委員会は、保健・生活機能委員会、教育委員会、就労・雇用委員会、社会委員会、技術アクセシビリティ国際委員会、レジャー・レクリエーション・スポーツ委員会、政策・サービス委員会です。 ■リハビリテーション世界会議の開催 世界会議は1920年代から1960年代までは、ヨーロッパ各国を中心に3年周期で開催されていましたが、1970年代からは4年周期で、世界のあらゆる地域で、各国持ち回りで開催されるようになりました。世界会議の開催経過は以下の表のとおりです。 【表:リハビリテーション世界会議開催の経過(World Congress of Rehabilitation International)】 第1回 1929 スイス・ジュネーブ                  第2回 1930  オランダ・ハーグ                     第3回 1936  ハンガリー・ブタペスト               第4回 1939  英国・ロンドン                     第5回 1951  スウェーデン・ストックホルム                  第6回 1954  オランダ・ハーグ                        第7回 1957  英国・ロンドン            第8回 1960  米国・ニューヨーク                  第9回 1963  デンマーク・コペンハーゲン                   第10回 1966  西ドイツ・ウィスバーデン          第11回 1969 アイルランド・ダブリン                 第12回 1972 オーストラリア・シドニー 第13回 1976 イスラエル・テルアビブ                 第14回 1980 カナダ・ウィニペグ                第15回 1984 ポルトガル・リスボン                   第16回 1988 日本・東京                  第17回 1992 ケニア・ナイロビ                  第18回 1996 ニュージーランド・オークランド                 第19回 2000 ブラジル・リオデジャネイロ                  第20回 2004 ノルウェー・オスロ         第21回 2008 カナダ・ケベック                  第22回 2012 韓国・仁川                   第23回 2016 英国・エジンバラ            第24回 2020 デンマーク・オーフス                 第25回 2024 アラブ首長国連邦 ・アブダビ ■RIにおける社会リハビリテーションの発展の経過 1972年にオーストラリアのシドニーで開催された第12回世界会議において、リハ4分野(医学、教育、職業、社会リハ)の内容・課題を明らかにするために、各分野の指針がまとめられました。その結果、「社会リハビリテーションの将来のための指針(The Guideline for the Future of Social Rehabilitation)」において、社会リハは@物理的環境、A経済的環境、B法的環境、C社会・文化的環境、D心理・情緒的環境、を改善することが課題であるとされ、障害のある方々を巡る環境を改善することが社会リハの課題であるとされました。 しかし、1960年代にアメリカを中心に障害当事者によるIL運動が始まり、専門職主導のリハビリテーションが否定されるようになりました。また、環境を変えることはリハビリテーションではないとされ、このような経過を得て、1980年代初頭から、RI社会委員会は「社会リハビリテーション」の定義の検討を行い、1986年にRI総会において新たな定義が採択されました。 「社会リハビリテーションとは社会生活力(Social Functioning Ability:SFA)を身につけることを目的としたプロセスである。社会生活力とは様々な社会的な状況の中で、自分のニーズを満たし、もっとも豊かな社会参加を実現する権利を行使する力を意味する。」(奥野英子訳) [原文:Social rehabilitation is a process, the aim of which is to attain social functional ability. The ability means the capacity of a person to function in various social situation towards the satisfaction of his or her needs and the right to achieve maximum richness in his or her participation in society.] ■「社会生活力」を高めるためのプログラム・マニュアル作り 1986年に採択された社会リハビリテーションの定義におけるキーワード「社会生活力(SFA)」を高めるために、「社会リハビリテーション研究会」はこれまでに、身体障害、知的障害、精神障害のある方々を対象とする障害対象別のプログラム・マニュアルを発行し、研修会を実施してきました。 2020年にはあらゆる障害のある方々を対象とし、更に、「生きづらさ」を抱える方々も使えるプログラム・マニュアル「障害のある人のための社会生活力プログラム・マニュアル:自分らしく生きるために」を発行しました。 障害当事者が権利の主体となり、充実した、豊かな生活を送れるようになるために、「社会生活力プログラム」が活用されることを願っています。 ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 192 (2025年4月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en 2.ESCAP「アジア太平洋障害者の十年」ワーキンググループ 第1回会合が開催されます。 この度、「アジア太平洋障害者の十年」ワーキンググループの第1回会合が開催されることとなりました。 ■日程:2025年6月3日(火)〜4日(水) ■場所:国連会議センター(タイ・バンコク) この会合は、20か国の政府と20の市民社会組織が十年実施を進めるため、各国の経験と好事例を共有することを目的に開催されます。 JANNET会員団体と関係する国際組織でも、参加の検討が進められています。   ■ワーキンググループメンバー 加盟国: アゼルバイジャン、バングラデシュ、ブータン、ブルネイ・ダルサラーム国、カンボジア、中国、グルジア、インド、日本、マレーシア、モルディブ、モンゴル、パキスタン、フィリピン、大韓民国、シンガポール、スリランカ、タイ、トンガ、英国(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国) 市民社会組織: ASEAN自閉症ネットワーク(AAN) ASEAN障害フォーラム(ADF) アジア太平洋障害開発センター(APCD) アジア太平洋障害フォーラム(APDF) アジア太平洋障害者団体連合(AP-DPO United) アジア太平洋ダウン症連盟(APDSF) 中央アジア障害フォーラム(CADF) CBIDアジア太平洋ネットワーク(CBID APネットワーク) デジタル・アクセシブル・インフォメーション・システム・コンソーシアム(DAISY) アジア太平洋障害者インターナショナル(DPI-AP) ヒューマニティ&インクルージョン(HI) 国際選挙システム財団(IFES) 太平洋障害フォーラム(PDF) リハビリテーション・インターナショナル(アジア太平洋)(RI-AP) 南アジア障害フォーラム(SADF) インクルージョンに向けたコミュニティ変革(TCI-Global) 世界盲人連合アジア太平洋(WBU-AP) 世界盲ろう連盟(WFDB) 世界ろう連盟アジア地域事務局(WFD RSA) 精神医療の利用者・サバイバー世界ネットワーク(WNUSP) 【参考】 ■6つの優先行動分野(ジャカルタ宣言) 1. 各国の法律を障害者権利条約と調和させること 2. 障害者の有意義な参加を促進すること 3. 物理的およびデジタルアクセシビリティを強化すること 4. 民間部門を関与させること 5. 障害者政策にジェンダー対応型ライフサイクル・アプローチを適用する 6. 障害に関するデータのギャップを埋め、追跡能力を強化する。      イベント情報 1.第26回「リハ協カフェ」 2025年5月23日(金) 日本障害者リハビリテーション協会の国際委員会では、国際協力分野において障害分野の課題に取り組んでいくため、情報発信を継続し、関係者への情報提供を行うべく、2020年8月よりリモートによる報告会「リハ協カフェ」を隔月で開催してまいりました。今回は第26回目の開催です。 第26回は、河村 宏氏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 副理事長/RI技術・アクセス国際委員会(ICTA)副委員長)より「『Global Disability Summit 2025』参加報告」(仮)について、また土橋 喜人氏(金沢工業大学情報デザイン学部環境デザイン創成学科 教授・調整中)より「四つのバリアの再考:国際比較研究成果ともう一つのバリア」(仮)についてご報告いただきます。  関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。   ◆日時:2025年5月23日(金)13:30〜15:15 ◆会場:リモート開催(Zoom) ※要約筆記が入ります。 ◆主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ◆共催:障害分野NGO連絡会(JANNET) ◆参加費:無料 ◆定員:100名 プログラム(敬称略) 13:30-13:35 開会挨拶 君島 淳二(公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:15 報告1 「『Global Disability Summit 2025』参加報告」(仮) 発表者:河村 宏氏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 副理事長/RI技術・アクセス国際委員会(ICTA)副委員長) 14:15-14:25 質疑応答 14:25-15:05 報告2 「四つのバリアの再考:国際比較研究成果ともう一つのバリア」(仮) 発表者:土橋 喜人氏 ※調整中(金沢工業大学情報デザイン学部環境デザイン創成学科 教授)          15:05-15:15 質疑応答 15:15    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【発表者プロフィール】 ・河村 宏 氏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 副理事長・RI技術・アクセス国際委員会(ICTA)副委員長) 1969年東京大学理学部卒。 1970-1997年 東京大学総合図書館に勤務。 1996-1997年 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所併任 1997-2003年 日本障害者リハビリテーション協会 2003-2007年 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 2007年- 現職  東京大学総合図書館在職中に国際図書館連盟盲人図書館セクション議長(1990-95年)を務め、デジタル録音図書の国際標準規格としてのDAISYの開発を提唱し国際DAISYコンソーシアムの結成に暫定プロジェクトマネージャーとして参画。 以後DAISYの開発とグローバルな普及に努め、DAISYコンソーシアム会長(2008-2011)、WAI/W3C委員、JICA人間開発部支援委員、障害者放送協議会著作権委員会委員長、国連世界情報社会サミット障害者コーカス・フォーカルポイント(2003-2005)、第3回国連防災会議障害者グループ・フォーカルポイント(2015)などを務め、2016年からRI/ICTA副委員長。 国際協力の分野では、エジプト、エクアドル等の国々でJICAプロジェクトのChief Advisor等を務める。 ・土橋 喜人 氏(金沢工業大学情報デザイン学部環境デザイン創成学科 教授) 国際基督教大学、民間銀行、青年海外協力隊、アジア経済研究所開発スクール、英国マンチェスター大学大学院(開発学修士)を経て、2001年より国際協力銀行(JBIC)、2008年より2015年まで国際協力機構(JICA)にて勤務。その後、宇都宮大学大学院にて博士(工学)を取得し、宇都宮大学客員教授を経て、現職。 JBICにて障害と開発の取り組みの立ち上げを担当し、JICAでも障害と開発の推進に貢献(学会発表、論文発表多数)。専門は交通バリアフリーと障害と開発。バリアフリーやユニバーサルデザイン関係の論文多数。共同翻訳に「貧しい人を助ける理由」(2017)等。 【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://www.jsrpd.jp/cafe26/ 申込受付:2025年5月22日(木)15:00まで ※情報保障が必要な方は、5月15日(木)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、テキストデータなど必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。    【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒162-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 編集後記 4月。出会いや新生活が始まる時期となりました。 これまで、3月半ば頃の桜の開花が続いていましたが、今年は4月8日前後まで満開となり、丁度いい日にちに桜が満開になったと感じるのは私だけでしょうか? 保育園、幼稚園入所から新社会人、新天地での生活が始まった方、これまでの生活から一変し、気持ち新たとなった方もたくさんいる事でしょう。 さて、東京2025デフリンピックに向けて、ボランティア募集を3,000名と予定したところ、想像を超え、予定の6倍にあたる18,903人の応募がありました。関心の高さが伺えます。 現在、目玉ニュースが2つあります。デフリンピックの開会式が行われる11月15日に、福島県のJビレッジ(サッカー競技会場)で、ブルーインパルス飛行が行われます。 もう1つは、11月25日に、マラソン競技を「東京高速道路・首都高速道路高速八重洲線の一部」で行う予定です。皆さま、是非とも応援をよろしくお願いします。 (嶋本 恭規/JANNET広報・啓発委員長) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: https://jannet-hp.normanet.ne.jp/ 以上