JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第260号 6月号 2025年6月30日発行 ―目 次―  トピックス 〜第26回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. 国際比較による四つのバリアの再考と災害のバリア 金沢工業大学情報デザイン学部環境デザイン創成学科 教授 土橋 喜人 2. 四半世紀ぶりの日本開催!世界理学療法連盟学会が都内で開催されました 公益社団法人日本理学療法士協会 理事/国際事業課 課長 伊藤 智典 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 第27回「リハ協カフェ」 2025年7月31日(木) トピックス 〜第26回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. 国際比較による四つのバリアの再考と災害のバリア 金沢工業大学情報デザイン学部環境デザイン創成学科 教授 土橋 喜人 ※去る2025年5月23日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第26回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。   本報告は、第1部では科研費による調査結果としての四つのバリアの再考、第2部では能登半島の震災支援を通じての考察となる「もう一つのバリア」として考えるべきことに関するものです。 第1部として、四つのバリアの再考(国際比較)の報告をしました。日本では1993年から政府で制定された「四つのバリア」という考え方について、他国の取り組みと国際比較することにより見直しを行なったものです。障害者対策推進本部による「障害者対策に関する新長期計画〜全員参加の社会づくりをめざして〜」(1993)において、物理的な障壁,制度的な障壁,文化・情報面での障壁,意識上の障壁(心の壁)に分けてきました。しかし、既に30年以上もたっており、権利条約の制定・発効、様々な国内法改正も行なわれてきています。レビューを行なう意義があると考え、本研究を実施しました。 インタビュー対象者は、英国、豪州、フィンランド、タイ、インド、米国、ベトナムと先進国および途上国共に行いました。先進国と言われる諸国でも多くの問題を抱えていることがわかりました。途上国でも法整備等が整っても、実施などに課題を抱えていることがわかりました。四つのバリアについては他の国でも取り組まれていることがわかりました。 ですが、逆に他の国では取り組まれているものの、日本では取り組まれてないものとして、権利、遂行・実施、財政、という面が浮かび上がってきました。 これらの結果について、日本国内の有識者・障害当事者のリーダーにもインタビューを行ないコメントを求めたところ、人権の問題が大きく、遂行や予算などの問題もあるのと指摘でした。見直しは必要であるが、実施するとした場合には人権や民主的な考えも取り入れた包括的な取り組みが必要であるということでした。 そのため、検討すべき概念としては、一つ目は「人権のバリア」、二つ目は「実施・実行・実効性のバリア」、三つ目は「財政面のバリア」といったことを含めて取り組みを考えていく必要があるのではないかと考えております。 第2部では、能登半島地震の経験を通じての考察を行ないました。 私自身も被災しており、寄付程度しかできていませんでした。一方、地元のNGOでは、様々なステークホルダーと石川バリアフリーツアーセンターがつながり、バリアフリーツアーセンターの全国各地の支援や、民間企業等と能登2市3町の支援を実施していました。 発災1年後、現地の状況も落ち着いてきたため、ボランティアの活動が力仕事ではなく、傾聴や見守りになってきました。複数の団体に相談し、JDFで行くこととしました。私は1週間の活動で、障害者団体、仮設住宅個別支援先、仮設住宅への訪問&送迎などを行ないました。詳細は、支援活動ニュース「やわやわと」に掲載されています。 (以下「やわやわと」URL) https://jdf-hq-hp.normanet.ne.jp/noto/news/news_39.pdf   この過程で、災害のバリアが「もう一つのバリア」となるのではないかと考えました。「災害対策基本法」の改正により「福祉的支援等の充実」をすることになる(なった)が災害弱者(高齢者等の要配慮者)が(他被災者に)「優先」して支援されることにはなっていません。災害弱者が救えないのではないかと危惧します。 能登半島地震の問題は日本の問題ではないか、というのが私のボランティア経験(他団体にも別日程で参加)でした。災害時の課題だけではなく、日常の障害者が持つ課題を浮き彫りにしており、当事者も関係者ももっと声をあげる必要があるでしょう。 一人一人ができることをしていく、積み上げていくことも必要でしょう。情報発信を各自で行なっていくことも必要です。情報は被災者に配慮しながらも発信していく必要があり、風化させないようにしかないといけません。でも、心に傷を負っている人もいるのでそこは傷付けないようにしていかないといけないでしょう。   (参考文献) 土橋喜人. 2024. 四つのバリアの再考:8か国の国際比較を通じた考察、札幌: 第28回日本福祉のまちづくり学会全国大会2024 Dobashi, Y. 2024. How Many Barriers Do You Recognize? Comparison of Accessibility Barriers to Persons with Disabilities in Eight Countries、Seoul, Korea: Asian-Pacific Planning Societies 2024 土橋喜人・中子富貴子・坂井さゆり. 2025. 緊急支援時の支援物資に関する考察:能登半島地震の災害弱者支援を事例に. 香川大学: 第71回土木計画学研究発表大会2025   2. 四半世紀ぶりの日本開催!世界理学療法連盟学会が都内で開催されました 公益社団法人日本理学療法士協会 理事/国際事業課 課長 伊藤 智典 世界最大の理学療法士のイベント、世界理学療法連盟学会が5月29−31日の3日間、東京国際フォーラムで開催されました。これまで過去最高を記録する5,000名以上が参加した本学会では、北アメリカ、南アメリカ、オセアニア、ヨーロッパ、アフリカ、もちろんアジアなど約120カ国から参加があったとのことです。 学会開会式には、国立障害者リハビリテーションセンターの芳賀信彦総長、日本作業療法士協会の山本伸一会長、日本言語聴覚士協会の内山量史会長らがご出席されました。またWHOのリハビリテーションテクニカルリードなども出席しました。学会開催は2019年のジュネーブにさかのぼります。ジュネーブの学会閉会式において、2023年の開催として公式に日本開催がアナウンスされたものの、COVID-19のパンデミックにより開催が見送られ、本来2025年開催であったドバイと日本の順番が入れ替わりになりました。学会準備にかかわっていたものとして、2年間の延期は色々と考えさせられるものがありました。 しかし2025年、満を持して開催した学会では、ちょうど日本円が弱くなった時期でした。これにより中・低所得国の理学療法士らの参加も多く得られて、過去最高の参加者数になったようです。日本理学療法士協会はホスト組織として、会長の斉藤秀之から開会式、学会パーティー、閉会式において、スピーチをする機会がありました。展示フロアに設置されたJapan house(日本のことを紹介するブース)では、ボランティアの学生や理学療法士会員らが海外からの参加者らへ折紙の折り方や法被をきて写真撮影、名前をカタカナで書いてシールをプレゼントするなど、日本のファンを増やすような取り組みをしました。 1999年の同学会で準備委員長を務めた故 田口順子氏(JANNET創設者の一人で、元研修・研究委員長)に思いをはせつつ、恥ずかしくない学会が開催できたのではないかと考えているところです。これもひとえに学会の誘致から準備、運営にかかわってくださった政府や東京都の関係者の皆様、運営に関する企業や会場職員の皆様、世界理学療法連盟や日本理学療法士協会の役職員、そして何よりも一緒に汗を流してくださったボランティアの皆様のおかげと心からお礼を申し上げる次第です。 この学会が、関係者の皆様の記憶に残るものであること、また障害を持つ人を支える専門職の更なる活躍につながることを祈っています。多くの出会いに感謝を、そして次の学会開催地メキシコでは、また多くの出会いを期待しています。 ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 193 (2025年6月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en      イベント情報 1.第27回「リハ協カフェ」 2025年7月31日(木) 日本障害者リハビリテーション協会の国際委員会では、国際協力分野において障害分野の課題に取り組んでいくため、情報発信を継続し、関係者への情報提供を行うべく、2020年8月よりリモートによる報告会「リハ協カフェ」を隔月で開催してまいりました。今回は第27回目の開催です。 第27回は、春名 由一郎氏(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 前副統括研究員)より「職業リハビリテーションを学んで〜黄金期はこれから」について、また山田 雅穂氏(ダイバーシティ政策研究所所長/株式会社アデランス独立社外取締役)より「Disability-inclusiveな雇用とCSRとは−障害当事者の視点を活かして」についてご報告いただきます。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。    ◆日時:2025年7月31日(木)13:30〜15:15  ◆会場:リモート開催(Zoom) ※要約筆記が入ります。  ◆主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会  ◆共催:障害分野NGO連絡会(JANNET)  ◆参加費:無料  ◆定員:100名 プログラム(敬称略) 13:30-13:35 開会挨拶 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 13:35-14:15 報告1 「職業リハビリテーションを学んで〜黄金期はこれから」 発表者:春名 由一郎氏(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 前副統括研究員) 14:15-14:25 質疑応答 14:25-15:05 報告2 「Disability-inclusiveな雇用とCSRとは−障害当事者の視点を活かして」 発表者:山田 雅穂氏(ダイバーシティ政策研究所所長/株式会社アデランス独立社外取締役)           15:05-15:15 質疑応答 15:15    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【発表者プロフィール】 ・春名 由一郎 氏 (独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 前副統括研究員) 東京大学医学部保健学科卒業。東京大学大学院医学系研究科修了。博士(保健学)。 1994年から2025年まで、障害者職業総合センターにて研究員・副統括研究員として研究と講義・講演等に従事するとともに、厚生科学審議会難病対策委員会専門委員も長年務める。保健学および国際生活機能分類(ICF)を基盤に、難病を含む障害のある方々の就労支援・治療と仕事の両立支援、地域の就労支援人材の育成、欧米を中心とした障害者雇用政策の国際比較研究など、医療・福祉と「働く」をつなぎ、現場と政策をまたぐ実践的な研究に取り組んできた。 2025年に退職後も、「人生100年時代の60歳は“セカンドライフの10歳”」と位置づけ、AIや科学を学び直しながら、障害者の“働く”をめぐる次世代の支援づくりに挑戦中。 ・山田 雅穂 氏(ダイバーシティ政策研究所所長/株式会社アデランス独立社外取締役) 【現職】 ・ダイバーシティ政策研究所所長 ・株式会社アデランス独立社外取締役 ・中央大学総合政策学部兼任講師 ・経営倫理士 ・専門社会調査士 【略歴】  法政大学大学院人間社会研究科博士後期課程  人間福祉専攻修了、 博士(人間福祉)。  専門分野は障害者雇用政策、DEIB(Diversity, Equity, Inclusion and Belonging)、CSR、経営倫理、福祉政策。  障害のある当事者としての視点を活かしながら、障害のある人を含めたDEIBについてCSR、経営倫理を含めた学際的な研究を行っている。株式会社アデランスでは、障害のある人を含めたDEIBの専門家として独立社外取締役を務めている。 【研究ホームページ】 https://researchmap.jp/mihoyamada (リサーチマップ) 【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://www.jsrpd.jp/cafe27/ 申込受付:2025年7月30日(水)15:00まで ※情報保障が必要な方は、7月22日(火)までにお申し込みください。 定員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、テキストデータなど必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。 【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒162-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp   編集後記 去る6月16日の国連総会において、6月27日を「International Day of Deafblindness」とすることが決定しました。まだ日本語訳は決まっていませんが、いずれ日本の国連広報センターにて掲載されることでしょう。なお、当協会からは「国際盲ろうの日」という訳を提案しております。 この6月27日という日は、皆様もご存じであろうヘレン・ケラーの誕生日であり、この記念日の制定を受けて、日本ではまだ法的に定義されていない「盲ろう」障害が、明確に法的に位置づけられ、社会に周知されることにより、盲ろう者が取り残されることのない社会を実現するための後押しとなることが期待されます。  (小林 真悟/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: https://jannet-hp.normanet.ne.jp/ 以上