JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第270号 4月号 2026年4月30日発行 ―目 次―  トピックス 1. みなが参加、心でつないだ東京2025デフリンピック 一般社団法人日本作業療法士協会 国際部/ JANNET研修・研究委員会委員長  西本 敦子 〜第31回「リハ協カフェ」登壇報告〜 2. NGOスタディプログラム アメリカ・ブラジル調査報告 ― 交差性に関する現状と取り組みについて 特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)  田丸 敬一朗 3. デジタル デバイド“Digital Divide”って知ってますか?(A 萌芽期) ー「Windows革命」の申し子ー 日本障害者協議会(JD) 政策委員  磯野 博 インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1.第32回「リハ協カフェ」 2026年6月5日(金) トピックス 1. みなが参加、心でつないだ東京2025デフリンピック 一般社団法人日本作業療法士協会 国際部/JANNET研修・研究委員会委員長  西本 敦子 2026年3月27日、新宿区の戸山サンライズにて、JANNET主催の研究会「とりのこさないカフェ 2026 〜デフリンピックを未来へつなぐ場〜」が開催されました。会場とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で実施され、合計100名の方々が参加されました。   当日は手話通訳者画面の表示や会場での手話読み取りに加え、要約筆記画面の配信や会場での表示などの情報保障も整えられ、誰もが安心して参加できる環境のもと、温かなひとときが広がりました。登壇した3名の豊かな手話と言葉、映像を交えた語りに、会場は笑顔と共感に包まれました。    山田真樹選手は、男子陸上400m、4×400mリレーで金メダル、200mで銀メダルという素晴らしい成績を収められました。一時は「走れないかもしれない」と悩んだ時期もあったそうですが、周囲の支えによって乗り越えることができたと語られました。また、日本開催ならではの応援については、「プレッシャーでもあり、最大の励みにもなった」と話されていました。 山田選手のお話からは、デフリンピックが単に順位を競う場ではなく、仲間や支えてくれる人とのつながり、心の絆を改めて実感できる場であることが伝わってきました。    亀澤理穂選手は、卓球選手として5大会連続出場という豊かな経験をもとに、ベテランの立場として仲間たちと今大会に臨まれました。全国から寄せられた手話での応援や、あたたかなおもてなしへの感謝を述べられるとともに、「デフスポーツをもっと身近なものとして知ってほしい」と力強く語られました。今大会の前からSNSでも情報を発信されています。 自身が切り拓いてきた道を次世代へつなごうとする姿も見られ印象的でした。    筑波技術大学の大杉豊教授からは、デフリンピックが「当事者主体」で発展してきた歴史と、その意義についてお話がありました。選手や運営に関わる人々が互いを尊重し合いながら築いてきた歩みは、共生社会のあり方を考えるうえで大きな示唆を与えてくださいました。    また、報告会ではデフリンピックを支えた技術にも関心が集まりました。競技では、音の代わりにフラッシュランプの光でスタートを知らせたり、歓声を「ミルオト」によって視覚化したりするなど、さまざまな工夫が取り入れられていたことが紹介されました。さらに、会場では両手を挙げて振る「手話の拍手」も自然に広がり、音を超えた視覚的な応援が会場全体を一つにしていました。 その後の茶話会では、手話ができる方もできない方も、通訳を介しながら和やかに交流しました。仕事との両立や日々の工夫といった身近な質問にも、登壇者の皆さまが笑顔で丁寧に答えてくださり、会場は最後まであたたかな雰囲気に包まれていました。デフリンピックが灯した思いや学びを日常の中につなげていく大切さを改めて感じだれもとりのこさない世界の一歩をふむ貴重な機会となりました。 〜第31回「リハ協カフェ」登壇報告〜 2. NGOスタディプログラム アメリカ・ブラジル調査報告― 交差性に関する現状と取り組みについて 特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)  田丸 敬一朗 ※去る2026年4月3日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第31回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。 【写真(スクリーンショット):田丸さまがお話しされているところ】 今回、私は、NGOスタディプログラムという外務省の補助金を利用し、2025年8月26日から9月8日までの14日間にわたり、アメリカ(ワシントンDC、ニューヨーク)およびブラジル(サンパウロ)で、障がいのある難民および世界の視覚障がい者の状況について調査を実施しました。 【写真(画像):当日のパワーポイントより・スライド2「NGOスタディプログラムとは」】 **米国調査:国際機関とインターセクショナリティ** アメリカでは、国連機関(UNICEF、UN Women等)や国際障害同盟(IDA)を訪問し、障害インクルージョンに関する国際的な戦略を調査しました。  特に2019年に設立された「国連障害インクルージョン戦略(UNDIS)」は、すべての国連機関において障害インクルーシブな戦略立案を支援し、当事者を含めた体制でプロジェクトを促進しています。   【写真(画像):当日のパワーポイントより・スライド5「UN Disability Inclusion Strategy」】 また、IDAは190か国の当事者団体を束ねるネットワークとして、国や国際開発機関における障害当事者の参加や障がい関連予算の確保、難民やジェンダー、先住民といった「交差性(インターセクショナリティ)」への対応、さらに気候変動が障害者に与える影響を優先課題として掲げています。   **障がいのある難民の課題**  国際難民支援プロジェクト(IRAP)のElham Youssefian氏へのインタビューでは、障害のある難民が世界に約2,000万人いると推定される一方で、支援から取り残されている実態が浮き彫りになりました。 【写真(画像):当日のパワーポイントより・スライド12「Elham Youssefian 氏について」】   * **受け入れの不備:** 難民受け入れ時の質問項目に障害の有無がなく、必要な支援につながらないケースが多い。また、環境や情報などのアクセシビリティも十分に確保されているとは言えません。  * **制度の空白:** 多くの国で、難民政策と障害政策の双方において言及がなく、第三国定住への応募も困難な状況にあります。  * **関心の低さ:** 障害者・難民支援団体の双方で関心が低く、国際会議でも議題化されにくい現状があります。   世界情勢が悪化し難民の総数が増えている一方で、障害のある難民など、交差性への注目度はいまだ低いことを強く感じました。   **世界盲人連合(WBU)総会と各国の取組** ブラジルで開催された第11回WBU総会には、100か国以上から約1,300名が参加しました。ここでは、点字教育、雇用、女性や若者のリーダーシップ、自然災害や紛争下の課題、AI等のデジタル技術活用について議論されました。 各国調査では、コスタリカの大統領府における障害者助言機関の設置や、アルゼンチンの電子図書館「テフロリブロ」など、先進的な事例が紹介されました。一方で、依然として点字教育や歩行訓練の地域格差、統計データの不足、移動・情報アクセスの障壁といった共通課題は、濃淡の差はあるものの、各国に共通する課題として残されています。   **今後の展望** 今回の調査を通じ、障害、難民、ジェンダーといった要素が重なり合う「交差性」の視点の重要性が再確認されました。今後は、政府や支援機関への政策提言や市民社会組織への働きかけを強化し、「誰一人取り残さない」だけでなく、「最も脆弱な人々を包摂する」支援の実践をいっそう強化していく必要性を感じました。       3. デジタル デバイド“Digital Divide”って知ってますか?(A 萌芽期)  ー「Windows革命」の申し子ー 日本障害者協議会(JD) 政策委員  磯野 博   1 はじめに  前号では「Windows革命」についてお話ししました。Windows 95以降、数々のアプリケーションがパソコンにインストールできるようになり、そのアプリケーションのひとつとしてWindows読み上げソフトや画面拡大ソフトなどが急速に発展してきたのです。実は、この恩恵に預かった障害者の一人が私だったといえます。 2 ヘレンケラーと私  今年度も勤務校での講義が始まりました。私は、いつも初回の講義では自己紹介を兼ねて「ヘレンケラーと私」のお話をします。ヘレンケラー(Helen Adams Keller 1880〜1968)はアメリカの障害者権利擁護者であり、作家・講演家です。ヘレンは生後19ケ月に視力と聴力を失い、そのため言語を獲得できず、いわゆる「三重苦」を負ったことはご存じの通りです。「私とヘレンケラーの違いは?」この問いに対して初対面の雰囲気は一転し、学生たちは首をかしげます。 私は進行性の網膜の難病であることは前号にてお話ししましたが、発症は10歳頃、皆さんと同じように成長し、感性と知識を獲得してからの発症だったのです。「では、ヘレンケラーのように物心付く前に視覚の障害を負った乳幼児は、どうやって私たちと同じ感性や知識を獲得するのか?」これが、私が最初に投げ掛ける学生への質問なのです。 この質問への回答は氷見交々、四半世紀教員をしていると時代の変遷も感じるところです…。さて、本稿の目的はこの後の学生へのお話です。 3 人生を賭けた挑戦  私の視角障害が最重度化したのは30歳頃でした。当時の同僚であったベテラン看護師はこういってくれました。「あんたの目は必ず見えなくなる病気なんや!すぐここを辞めて針灸マッサージの学校に行きなはれ!そうすれば何とか生活ができるんや!私の言ってることの意味は必ず分かる日が来るんやで!」今思い返しても涙が出るようなありがたいご助言です。 しかし、1962年生誕の私が30歳頃、丁度この時期が正に「Windows革命」の訪れだったのです。 4 「Windows革命」の申し子  時代に「もし?」はありませんが、視覚障害の重度化が10年早ければ、私は前述の同僚からの助言に従い、確実に点字と針灸マッサージの世界に身を投じていたと思います。しかし、時代は変わっていたのです。「Windows革命」を知った私は情報をかき集めました。 あの頃は、まだ携帯電話もインターネットもなく、情報は東京に集中するのが当たり前の時代でした。私は自宅の固定電話から知った情報を辿り、休日は東京に赴き、何とか音声ワープロソフトと画面拡大ソフト、インターネット支援ソフトと墨字読み上げソフトを購入したのです。当時は勤務していた特養の介護主任になっており、多少は無理をいえる立場、現場に一台しかないWindows95デスクトップパソコンにそれらのアプリケーションをインストールし、勤務時間外の夜、そして夜勤時の深夜など、ヘッドホンを使いながらそれらを操作していました。 前号でもお話ししましたが、私の最大のトラウマは見ることと書くこと、とりわけ書くことに関してはバッシングがひどく、今では差別案件になる程でした…。しかし、これらの新たな手法により、私のフラストレーションは解消され、「これならできる!!!」と人生の新たな道が拓けた思いを強くしたこと、よくよく覚えています。これぞ“New DEAL”、現在は変な大統領が“DEAL”を連発するので、この言葉への印象はグレー・ブラックになっていますが、私にとっての“DEAL”は、「人生を賭けた挑戦!」だったのです。 しかし、そのような私に新たな苦難が訪れたのでした…。 <次号に続く>     ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報    (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html)    署名国・地域数164/ 締約国・地域数 193 (2026年4月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.第32回「リハ協カフェ」 2026年6月5日(金) 日本障害者リハビリテーション協会の国際委員会では、国際協力分野において障害分野の課題に取り組んでいくため、情報発信を継続し、関係者への情報提供を行うべく、2020年8月よりリモートによる報告会「リハ協カフェ」を隔月で開催してまいりました。今回は第32回目の開催です。 第32回は、若嶋 郁恵氏(フリーランサー)より「ニュージーランド在住日本人コミュニティーの今と未来 ―シニア支援と多世代交流の現場から―」について、また桑名 敦子氏(日本語教師)より「私と自立生活運動」についてご報告いただきます。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。 ◆日時:2026年6月5日(金)13:30〜15:15 ◆会場:リモート開催(Zoom) ※要約筆記が入ります。 ◆主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ◆共催:障害分野NGO連絡会(JANNET) ◆参加費:無料 ◆定員:100名   プログラム(敬称略)*プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 13:30-13:35 開会挨拶  吉田 正則(日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:15 報告1  「ニュージーランド在住日本人コミュニティーの今と未来 ―シニア支援と多世代交流の現場から―」  発表者:若嶋 郁恵 氏(フリーランサー) 14:15-14:25 質疑応答 14:25-15:05 報告2  「私と自立生活運動」  発表者:桑名 敦子 氏(日本語教師) 15:05-15:15 質疑応答 15:15    閉会 【発表者プロフィール】 ・若嶋 郁恵 氏(フリーランサー) 1978年札幌生まれ。ニュージーランド在住。フリーランサー。 幼少期より家族の心身の不調や環境の変化を経験する中で、「安心・安全で健康的なつながりとは何か」に関心を持つ。 高校では家政科、短期大学では生活学科にて、衣食住・家族・社会・人の営みについて学ぶ。 現在、Age Concern Auckland ソーシャルコネクションチームにて、日本人コミュニティコーディネーターとして活動。 日本語話者シニアを中心とした交流の場づくりやデジタル支援、多世代コミュニティの形成に取り組むほか、訪問ボランティアのマッチングを推進。 また、不登校経験のある10代のリスタート支援に18年携わり、子ども心理カウンセラー・家族療法カウンセラーの視点を活かし、世代や背景を越えた支援活動を行っている。 ・桑名 敦子 氏(日本語教師) 福島県郡山市出身で、現在はハワイ在住。 出産時の事故で脊椎損傷を負い、幼少期から車椅子で生活。 ミスタードーナツ障害者リーダー米国留学派遣第1期生として、カリフォルニア州バークレーの自立生活センターで研修を受け、ジュディー・ヒューマンやエド・ロバーツから自立生活運動を学ぶ。 その後、自立生活運動のリーダーであるマイケル・ウィンターと結婚し渡米。日本から養子を迎え、母親となる。 現在はオンラインで日本語教師をしており、趣味はスキューバダイビングと旅行。   【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://www.jsrpd.jp/cafe32/ 申込受付:2026年6月4日(木)15:00まで  ※情報保障が必要な方は、5月28日(木)までにお申し込みください。 定員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、テキストデータなど必要があれば申し込み時にお知らせください。  参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。   【お申し込み、お問い合わせ先】  《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》担当:村上・仁尾(にお)    〒162-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号    TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523  Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 編集後記 2025年11月に開催された第25回夏季デフリンピックin東京開催から早、もう半年になろうとしています。東京に於いて“誰一人とりのこさない“共生社会になっていくことを肌で実感しています。本当のスタートラインに立ったのだと思いました。 今年、障害者権利条約が採択されてから20年となりました。しかし今、国際連合の運営資金が集まらない状況です。2024年6月、NYにて障害者権利委員選挙があり、我が国から、きこえない当事者である田門浩氏が立候補、トップ当選となりました。今年2年目の審査委員会開催を迎えましたが国連は資金難を理由に手話言語通訳や字幕と言った情報保障提供ができないと言ってきました。 SDGs、持続可能な開発目標を2030年までに達成目標と決めました。人間は紛争を起しましたが平和や真の共生社会にしていくことも人間がやることであり、決して不可能ではないと願ってやみません。 (嶋本 恭規/JANNET広報・啓発委員長) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: https://jannet-hp.normanet.ne.jp/ 以上